平成31年度税制改正を確認(その1)-法人税
今年も「税制改正マップ (平成31年度) あいわ税理士法人編」を参考に平成31年度税制改正の内容を確認していくことにします。
余談ですが、この本のタイトルは「平成31年度(元年度)」となっており、元号が不明な時点で作成された苦肉の策であることが窺えます。
法人税関連の改正から確認していきます。
1.中小企業等に係る軽減税率の特例の適用期限の延長
中小法人等の軽減税率は、普通法人の場合は年800万円以下の分が15%に軽減されるというものですが、適用期限が2年延長され、2021年3月31日までに開始する事業年度に適用されることとされています。
ここまでは単なる期限延長ですが、今回の改正により前3事業年度の平均所得金額が年15億円を超えるものは適用除外事業者に該当するものとされ、軽減税率の特例の適用は受けられないこととされている点に注意が必要です。
個人的には、前3事業年度の平均所得金額が年15億円を超えるような会社にとって、年800万円以下の部分にのみ適用される税率差が重要かと考えると、かなり甘い要件であるように感じます。みなし大企業の範囲が見直されていることもあり、年800万円以下という部分を引き上げるような改正があってもよいのではないだろうかという気がします。
2.中小企業向け特例の適用対象法人の見直し
今回の税制改正によって、資本金が1億円以下であっても中小企業者とされないみなし大企業の判定において、大規模法人の定義に以下の法人が加えられました。
- 大法人の100%子法人
- 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人
なお、大法人とは、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上である法人、相互会社若しくは外国相互会社(常時使用従業員数が1,000人超のものに限る。)又は受託法人をいうとされています。
このほか、事業承継ファンドを通じて株式を保有されている場合の特例が設けられていますが、一般的にはあまり関係ないと思いますので割愛します。
3.試験研究費の税額控除制度の見直し
改正前の試験研究費の税額控除制度は、総額型、中小企業技術基盤強化税制、特別試験研究費に係る税額控除制度、高水準型の試験研究費に係る税額控除制度の四つの制度がありましたが、改正により総額型税額控除制度、中小企業技術基盤強化税制、オープンイノベーション型の三つの制度に編成されました。
今回の改正によって、研究開発投資の「量」をさらに増加させるため、控除上限を最大で法人税額の45%に引き上げるなど、研究開発投資の増加インセンティブがより強く働くよう見直しを行うとともに、研究開発投資の「質」の向上に向け、オープンイノベーションや研究開発型ベンチャーの成長を促す措置が講じられています。
①総額型の税額控除制度
改正前は、増減試験研究費割合との比較に5%が用いられていましたが、税制改正によって8%が基準値とされ、以下の算式で税額控除率が計算されることとなっています。
(1)増減試験研究費が8%超の場合
税額控除率(上限10%)=9.9%+(増減試験研究費割合-8%)×0.3
※上限は原則10%であるが、14%に引き上げる特例が2年延長されているため実際には14%が上限となっています。
(2)増減試験研究費割合が8%以下の場合
税額控除率(下限6%)=9.9%-(8%-増減試験研究費割合)×0.175
さらに、高水準型が廃止され総額型に統合されたことより、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合の税額控除率は、上記で算定した税額控除率に、(試験研究割合-10%)×0.5で計算される控除割増率を乗じて計算した率を加算した率となるとされています。
②中小企業技術基盤強化税制の特例
改正前の増減試験研究費が5%を超える場合の特例は、その割合が8%に改正され、適用期限が2年延長されています。
これにより改正後は以下の算式で税額控除率が計算されることとなっています。
税額控除率(上限17%)=12%+(増加試験研究費割合-8%)×0.3
①と同様、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、税額控除率を割ります措置が講じられています。
③オープンイノベーション型の試験研究費の税額控除制度
今回の改正で対象範囲が拡充され、大企業や研究開発型ベンチャーに対する一定の委託試験研究等が追加されるとともに、控除上限が引き上げられています。また、大学における研究開発の運営・管理体制の充実に向け、大学との共同研究等に係る試験研究費についてその運用が明確化されています。
オープンイノベーション型の試験研究費の税額控除は上記①、②と比較すると、それほど多くの会社に影響はしなさそうなので、詳細は割愛します。
今回はここまでとします。