改正項目の「事業等のリスク」、2019年3月期の早期適用は26社
経営財務3432号に掲載されていた”「事業等のリスク」の開示見直しの早期適用”によると、本年1月に公布・施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年内閣府令第3号)により、2019年3月期決算会社で「事業等のリスク」の部分を早期適用した旨を記載している会社は26社であったとのことです。
今回の改正では、経営者が経営成績等の状況に重要な影響を与えると認識している主要なリスクについて、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策などを具体的に記載することが求められていますが、早期適用した26社については、「いずれも前年をベースに記載内容や順番の整理を行ったケースがほとんどで,大きな記載の変化が生じた会社はみられなかった。」とのことです。
事業等のリスクの記載が改正されたのは、「一般的なリスクの羅列になっている記載が多く、外部環境の変化にかかわらず数年間記載に変化がない開示例も多いほか、経営戦略やMD&Aとリスクの関係が明確でなく、投資判断に影響を与えるリスクが読み取りにくい」などという問題点が指摘されていたことを受けたものとされています。にもかかわらず、上記のとおり、早期適用を選択した会社では記載に大きな変化は生じていなかったとのことですが、逆に考えると早期適用した会社は従来から事業等のリスクについて、きちんと検討されていたため、順番を変更したり、記載を多少工夫するといったマイナーな変更にとどまったという可能性もあります。
上記の記事で事例として紹介されていたアニコムホールディングスでは、”リスクへの対応策として「経営方針,経営環境及び対処すべき課題等」と結びつける文言を記載したほか、2018年3月期と比べてリスク情報の内容や順番を整理して、わかりやすく記載を行っていたことが特徴としてみられた”と述べられています。
作成者側からすると、いままで記載していた内容と記載内容を大きく変更することは、いままでの記載を自己否定することとなるので行いにくいと思いますので、それほどリスクはないと思いつつも、念のため記載しているような項目について削除を検討し、記載順序、対処すべき課題との関係などを見直すということが多くなるのではないかと思われます。