源泉徴収推計課税の明確化などが図られる-令和2年度改正
T&A master No.815に「実務に直結する令和2年度の納税環境整備」という記事が掲載されていました。
令和2年度の改正によって金地金取引による消費税還付スキームが制限されることとなったり、国外財産調書や資料を提出しない場合に加算税が過重されることとなるような改正が行われるようですが、この記事で取り上げられていた項目から個人的に気になった2点をとりあげます。
1.源泉徴収における推計課税の明確化
申告所得税においては推計課税の規定が明文化されている一方で、源泉徴収については推計課税できる旨の明示的な規定はなく、その方法も確立されていないとされています。そのため、個人事業者等に対する調査の際に帳簿書類の提示がない場合など、その者における従業員別の給与の支払金額が不明である場合には、所得税の調査が困難な事例が発生しているそうです。
そこで、今回の改正では、税務署長は個人事業者等における従業員別の給与の支払い金額の推計が困難である場合には、各従業員に同じ額の給与を支払った者とみなして所得税を徴するすることができることとし、推計により所得税を徴収できる旨が法令上明確化されるとのことです。
この改正は令和3年1月1日以後に支払われる給与等について適用されることになるとのことです。
2.キャッシュレスやクラウド会計への対応
令和2年度税制改正では、企業による請求書や領収書との授受及び保存について、キャッシュレス決済などへの対応が図られるそうです。
現行法では、電子的に受領した請求書等を電子データのまま保存する場合には、①データの受領後血合い無くタイムスタンプを付与、または②改ざん防止等のための事後処理規程を作成し運用するなどの要件があります。
令和2年度の改正では、上記に加え、③ユーザーが自由にデータを改変できないシステム(サービス)を利用、④発行者側でタイムスタンプを付与している場合の二つが追加されるとのことです。
不正をしようとする人がいるのは事実ですので、なんでもかんでも認めるというわけにはいかないのはわかりますが、電子保存等が容易に行えるようにする改正はどんどん行ってもらいたいと思います。
なお、この改正は令和2年10月1日以後適用開始となる予定とのことです。