初期費用込みのクラウド利用料は金額が区分されているかどうかで取扱いが異なる?
以前”クラウドサービス初年度利用料が高く設定されている場合の税務上の取扱いは?”で、クラウドサービスの初年度利用料が高く設定されている場合は、初期費用分が含まれていると推測し、当該部分は税務上の繰延資産として処理すべきという見解を紹介しました。
一方で、税務通信3585号の税務の動向に掲載されていた”初期費用込みのクラウド利用料 金額区分の可否で異なる処理”では上記と異なる見解が示されていました。
この記事では、クラウド導入費は一般的に支出の効果が将来に及ぶものであるといえるため「繰延資産」として支出の効果の及ぶ期間で償却していくこととなるとされ、初期費用と利用料が区分できるものは、初期費用相当額を繰延資産として処理することとなるとしています。
一方で、ベンダーから初期費用と利用料の内訳を記載した書類等が提示されない場合については以下のように述べられています。
このように契約書や請求書等から初期費用相当額と利用料が明確に区分できないような場合、利用料にサーバーへの設定等に係るコスト相当額が含まれた料金設定となっているといえる。そのため、支払うべき債務が確定しているのであれば、初期費用相当額と利用料を按分せず、全額を利用料として損金算入することが認められるようだ。
以前紹介した見解では、初年度の料金が高い場合は「利用料にサーバーへの設定等に係るコスト相当額が含まれた料金設定となっているといえる。そのため」初期費用と考えられる金額を繰延資産として計上すべきという説でしたが、実務上は賃借料として処理することも認められるということのようです。
利用料なので、ここを狙い撃ちしてこない限り2年目以降の賃借料が安くなっていたとしても問題となりにくいというだけなのかもしれませんが、この記事では「税務リスクを避けるためにも、こうした処理を行う場合にはベンダー側から書類等の提示が受けられなかったことなどについて記録を残しておくなど、客観的に説明できる資料を揃えておくことが無難といえそうだ」とされていますので、金額の内訳の提示を求めたものの入手できなかったという建付は必要ということのようです。