2019年12月期決算会社-新型コロナ関連の後発事象記載が11社
2週間ほど前に”新型コロナ関連の後発事象記載事例”で、2019年12月期の有価証券報告書に後発事象として新型コロナウイルス関連の記載をした事例として、日産自動車(東一、輸送機器、EY新日本)と極楽湯ホールディングス(JQ、サービス業、UHY東京)の2社を取り上げましたが、経営財務3453号によると12月決算会社の上場企業451社のうち11社で後発事象として記載があったとのことです。
後発事象として記載があった事例として上記の記事で紹介されていたのはHANATOUR JAPAN(東マ、サービス業)と、やまびこ(東一、機械)の2社です。
HANATOUR JAPAN(東マ、サービス業)では以下のように記載されています。
(重要な後発事象)
2020年1月頃より顕在化した新型コロナウィルス肺炎の感染拡大に伴い、2020年3月5日に新型コロナウィルス感染症対策本部により「水際対策の抜本的強化に向けた新たな措置」(「本件措置」)が決定され2020年3月9日より中国及び韓国をはじめとする一部地域からの入国が制限されており、また現時点においても本件措置の対象国は拡大の傾向にあります。
本件措置の運用開始を契機とする観光客数の急激な減少により各事業において重要な影響が生じていることから、翌期以降の連結業績に対する影響が見込まれるものの、現時点において合理的に見積もることは困難であります。
また、やまびこ(東一、機械)では以下のように記載されています。
(重要な後発事象)
新型コロナウイルス感染症の米国での感染拡大の影響により、当社グループは、米国における小型屋外作業機械を主に製造する一部工場の稼働につきまして、イリノイ州の州令による外出禁止令に基づき2020年3月20日から2020年4月7日までの操業停止を予定しております。操業停止期間中の製品在庫につきましては確保されており、物流も稼働していることから、製品供給については現在のところ重要な影響は出ておりません。しかし、米国での感染が終息せず、停止期間が延長された場合には重要な影響が生じる可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による取引先の臨時休業等により、販売が低迷し当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がありますが、当該影響額につきましては提出日現在において合理的に見積もることは困難であります。
上記の他、後発事象に新型コロナウイルス感染症関連の記載があったのは、中道リース(札幌上、その他金融)、ベルトラ(東マ、サービス業)、藤田観光(サービス業、東一)、ペッパーフードサービス(小売業、東一)、グローバルダイニング(東二、小売業)、ラオックス(東二、小売業)、アゴーラ・ホスピタリティー・グループ(東一、サービス業)などです。
飲食や観光関連の会社がほとんどとなっています。中道リースが異色ですが、開示内容は以下のとおりとなっており、特定地域の経済が落ち込むと大きな影響を受けるということだと考えられます。
(重要な後発事象)
(新型コロナウィルスの感染拡大による被害の発生)
今般発生している新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、当社顧客に対する営業債権について、一部回収が困難となる可能性があります。なお、当該損失が翌事業年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響については現時点では合理的に算定することは困難でありますが、貸倒関連費用の増加が見込まれます。
一方、事業等のリスクに「新型コロナウイルス」等について言及した記載を行った会社は54社あったとのことです。期限内に提出された448社とのことですので、約1割ということになります。とはいえ記載内容としては「感染が拡大した場合は生産や販売活動に支障が生じる可能性ある」等の記載が多いとされています。ある意味差し障りのない記載といえそうですが、3月決算会社の場合は開示府令の改正により、「当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど、具体的に記載する」ことが求められるため、上記のような記載をした場合にはセットで対応策も記載することが基本的に求められることとなると考えられます。
業績の下方修正や決算発表日の延期等が多数生じているので、少なからず影響があることは明らかですが、開示府令の改正を受け、3月決算会社でどのような記載がなされるのか、7月以降に確認してみたいと思います。