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数カ月間の役員報酬減額、戻した後の損金算入はどうなる?

4月以降、適時開示で「役員報酬の減額に関するお知らせ」という適時開示を多く見かけます。減額の方法自体(対象者、減額率、期間)は、会社それぞれですがいくつかサンプルをあげてみると以下の様なものがあります。

①代表取締役のみ減額幅が大きいケース(社外取締役、監査役は対象外)
<株式会社アルペン 2020年5月7日公表> 
 代表取締役:月額報酬の50%を減額
 常勤取締役:月額報酬の10%を減額
 期間はいずれも2020年5月から9月まで5か月間
 
②社外取締役を除く取締役一律減額のケース(期間未定)
<株式会社DDホールディングス 2020年4月22日公表>
 取締役全員(社外取締役を除く):月額報酬の30%減額(2020年5月分から当面の間)

③取締役だけでなく監査役まで一律減額のケース
<株式会社鳥貴族 2020年5月1日公表>
 全取締役(7名):役員報酬月額の40%を減額
 全監査役(3名):役員報酬月額の40%を減額
 期間はいずれも2020年5月から7月まで3か月

④代表取締役のみ減額のケース
<株式会社ヤマシナ 2020年5月8日公表>
 当社及び国内当社ブループ会社代表取締役:役員報酬月額の10%を減額
 海外グループ会社代表取締役:役員報酬月額の10%相当額を減額
 期間は2020年5月から当面の間
 
⑤役職別に減額幅が異なることに加え、監査役は自主返上のケース
<青山商事株式会社 2020年5月8日公表>
 代表取締役:月額報酬の50%減額(2020年7月から12月まで)
 取締役専務執行役員:月額報酬の30%減額(2020年7月から12月まで)
 取締役常務執行役員:月額報酬の20%減額(2020年7月から12月まで)
 取締役(社外取締役):月額報酬の10%減額(2020年7月から9月まで)
 執行役員(含む役付執行役員):月額報酬の10%減額(2020年7月から9月まで)
 
 監査役 月額報酬の10%を自主返上(2020年7月から9月まで)

上記のほか、役職別に○%~○%で減額するとしているケースや、短期業績、中期業績連動部分のみ減額するというようなケースなどもあります。

上記は主に役員報酬の減額に関連した開示をピックアップしたものですが、役員報酬の減額とは別に、上記⑤の青山商事の監査役にみられるような「役員報酬の自主返上」というケースも数としてはそれなりに多くみられます。役員報酬の減額と自主返上は、一般人からすればどちらも単なる表現の違いくらいにしかとらえられないような気はしますが、税の取り扱いは異なると考えられます。

今回は、役員報酬の減額を行うケースを考えますが、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」に4月13日に追加されたQ&Aでは以下のように記載されています。

問 7.《業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》 〔4月 13 日追加〕
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。
そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます
したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当します。

上記からすると、店舗営業が停止されている小売業やホテル業などにおける、業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額であれば、業績悪化改定事由による改定に該当し、減額しても損金算入が認められるということになりそうです。

問題は、前述の例のように減額期間を3ヶ月等として、一定期間経過後に元の水準に戻した場合、一度減額した水準から戻した部分はどうなのかが問題となります。

この点に関連すると考えられる「期中に支給額を戻せば定期同額給与に該当せず」という記事が税務通信3603号の税務の動向に掲載されていました。

この記事では、上記で取り上げたQ&Aにふれ、「基本的には、弾力的な対応が執られるようだ」とし、「企業側から疑問の声があがっているのは、この業績悪化改定事由による減額改定の後、同一事業年度中に元の水準に戻す増額改定を行うケースについてだ」と述べられています。

結論としては、増額改定は臨時改定事由に該当するかがポイントとなるが、単に一度減額した報酬を元の水準に戻すというのは、”「役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定”にあたらないため、増額改定後の金額のうち、改定前の金額を超える部分の金額が損金不算入となると述べられています。

この記事の内容からすれば、3ヶ月間のみ減額というようなケースでは、減額期間後元の水準に戻った場合には、一度減少した金額から増額となった部分が損金不算入となるということのようです。定期同額給与の趣旨が、恣意的な課税所得の操作を防止することにあるとすれば、上記の開示事例のようにあらかじめ何ヶ月分と宣言されているようなケースにおいては、課税上の弊害はあまりないように思うものの、一方で上場企業にのみ認められる方法となっていまい公平性に欠けるという側面もありますので、税務通信の記事のとおり下げたものを上げた部分は損金不算入になると考えておくのが無難だと思われます。

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