パリ協定目標に沿った投資のための経営戦略を記載した計画開示の株主提案に1/3超の株主が賛成-みずほFG
株主総会シーズンということで今回も直近に開催された株主総会からの話です。今回取り上げるのは2020年6月25日に開催された株式会社みずほフィナンシャルグループの株主総会の第5号議案についてです。
第5号議案は”定款一部変更の件(パリ協定の目標に沿った投資のための経営戦略を記載した計画の開示)”というもので、株主提案による議案となっています。
提案内容のポイントは議案のタイトルのとおりなので省略しますが、提案の理由は以下のとおり記載されています。なお、「株主提案の議案の内容および提案の理由は、誤字・脱字や事実認識も含め原文のまま記載しております」とされています(私のタイプミスはあるかもしれませんので、気になったかたは同社のHPに掲載されている招集通知等で原文をご確認ください)。
本提案は、御社が賛同するパリ協定の目標に沿った投資を行うための指標及び目標を含む経営戦略を記載した計画を開示することにより、御社が気候変動リスクに晒されることから守り、株主の資産を守ることを目的としている。
既に深刻な被害を引き起こしている気候変動は、人間社会及び世界及び地域経済に甚大なリスクをもたらすことが知られている。この危機を回避するための条約であるパリ協定は、世界の平均気温上昇率を産業革命以前と比べて2度を十分に下回るようにすること並びに1.5度に留めるよう努力することを目標にし、資金の流れを温室効果ガスの削減方針に適合させることも目標にしている。
現在、御社は、石炭火力事業会社に世界で最も多額の貸付を行っており、脱炭素経済への移行において価値が著しく低下する事業による甚大なリスクに晒されている。本提案により、株主は、当該リスクに対し御社がどのように対応するかを知ることが可能となる。
一般社団法人環境金融研究機構のサイトに2020年3月16日付で掲載されている記事によると、当該提案を行ったのは環境NGOの「気候ネットワーク(KIKO)」で気候変動に関する株主提案は日本では初めてとのことです。
みずほフィナンシャルグループが石炭火力事業会社に世界で最も多額の貸付を行っているということは知りませんでしたが、同サイトに掲載されていた「世界の主要銀行による石炭関連事業向け融資のランキング」によれば第1位みずほフィナンシャル、第2位三菱UFJフィナンシャル、第3位SMBCグループと日本の3行が上位を占めています。特に、上位2行が3位以下を大きく引き離しているという状況にあるようです。
「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄をみると、選出されているのは三井住友フィナンシャルグループのみとなっており、上記のような融資も関係しているのかも知れません。
世界経済フォーラムが毎年公表しているグローバルリスク報告書というものを公表しておりここ数年環境関連の項目が増えてきていましたが、2020年版において、「起こる可能性が高い」グローバル・リスクのトップ5すべてが環境関連の問題となっており、このような報告書からも世界的に環境への注目が高まっていることが確認できます。なお下記の画像の上段が「起こる可能性が高い」グローバル・リスク、下の段が「インパクトの大きい」グローバル・リスクで、緑色が環境関連の項目となっています。ここ数年で緑の項目が増えていることが感じ取れると思います。
(出典:The Global Risks Report 2020(World Economic Forum))
ちなみに上段の1位は「極端な気象現象」となっています。
さて、本題に話を戻しますが、本日みずほフィナンシャルグループから臨時報告書が提出され、各議案に対する賛成率が明らかになりました。
臨時報告書によると第5号議案に対する賛成率は34%で1/3超が賛成票を投じたということになっています。SDGsやESGに対する注目度は最近さらに高まっていると感じますが、この投票結果をふまえると、上場会社はかなり真面目に取り組む必要があるといえそうです。
なお、みずほフィナンシャルグループの株主総会では第5号議案の他にも、「第7号議案 定款一部変更の件(優越的地位にあるみずほ銀行が、株主提案者が勤務する取引先の企業に対して不当な圧力を与え、株主提案者に対して、当社グループへの株主提案を止めさせ、株主総会の場での株主質問をさせないようにさせて、株主へ不当に不利益を与える行為等の優越的地位の濫用を禁止)」というような株主提案もなされていましたが、こちらの賛成率はわずか5%となっていることからも、特殊な要因によるものではなく、純粋に第5号議案への株主への関心が高かったということなのだと思います。
最近の大雨や台風などの状況から思った以上にまずい状況になっているのは直感的に感じていますが、地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実を読むと、真面目に企業が取り組まないと未来はないと真面目に考えるようになりました。