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内部統制有効性評価で監査法人に損害賠償請求

T&A master NO.843のニュース特集に「内部統制の有効性評価で監査法人への損害賠償事件」という記事が掲載されていました。

てっきりJSOXに関連したものだと思いましたが、ここで紹介されていた事案は、中小規模の監査法人が非上場会社の内部統制の有効性評価を実施した際に起きた事件で、この事案の契約は監査意見を表明する監査契約ではないものの、契約に不正発見が含まれるか否かが争いの根底にあるようだとされています。

この事案は、「複数の子会社を有する原告の会社が、監査法人(被告)に対して原告及びその複数の子会社の経理の調査確認等を委任するとの契約において、被告が子会社の金融機関口座の残高証明書または通帳の原本を直接確認する義務を負っていたにもかかわらず、確認を実施した旨の誤った報告をしたため、当時原告の従業員であったものによる原告及び子会社等からの横領行為を覚知することができず、その後も横領被害が続いたことなどと主張し、被告に対し、債務不履行による約5,000万円の損害賠償を求めたもの」とされています。

上記記事には、監査法人の報告書が一部抜粋として掲載されていましたが、その中では「平成26年6月30日時点の原告の預金帳簿残高について、金融機関に残高確認を実施したところ、一部不整合が生じていた。」と記載されていました。不整合が生じていた内容についても記載されているものの、手続の前提としては、「金融機関に残高確認を実施したところ」とあるのみで、手続が実施できなかった除外事項については特に記載はされていませんでした。

また、原告(会社)の主張として記載されていたところによると、会社が監査法人に経理の調査確認を依頼した際に、「金融機関から残高証明書を取得して預貯金の直接残高確認を行うように特に依頼していた」とされています。これに対して監査法人側は、「原被告間で、原告グループ会社すべての預貯金口座について残高証明書や通帳の原本を確認することが合意された事実もない」と主張したとのことです。

口頭ベースでどのようなやりとりがあったのかについては当事者のみぞ知るわけですが、会社側の代表者が監査法人に調査を依頼する際に、金融機関に対して監査法人から直接確認を実施して欲しいというような個別具体的な手続を指定するというのはあまり多くないと思います。とはいえ、結果的に監査法人が金融機関に対して直接確認を実施しているようですので、そのような内容のリクエストはあったのかもしれません。会社側からすれば、後で争いとなった場合を考えて、業務委託契約等に実施すべき手続に明確に記載しておくというような対応をとっておくべきであったと考えられます。

記事によれば、「監査法人の代表者は、原告代表者から会社に不正がないかどうかの調査をもとめられたが、不正発見調査は引き受けられないとし、その後、株価算定及び内部統制のチェックの依頼を引き受けた」とされています。

会社代表者がなぜ不正の有無の調査を依頼しようとしたのかについては特に述べられていませんが、結果的に、株価算定と内部統制のチェックで落ち着いていることからすると、IPOの前準備あるいはM&Aによる会社売却を検討することを考えていたのではないかと推測されます。単に不正を疑っていただけなのかもしれませんが・・・

監査法人は、複数の預金口座について帳簿上の預貯金残高と残高証明書の一致を確認したとされていますが、「多くの銀行では原告グループ会社各社から残高証明書の発行を郵便で依頼し、被告がその照会結果について直接送付を受け付けることができたが、ゆうちょ銀行に対しては同様の方法を用いることができなかったため、原告から提供された資料を基に確認する方法とした」ところ、当該提供された資料が、横領を行っていた従業員が偽造したものであったとのことです。

ゆうちょ銀行は民営化されたといえ、少し特殊で、監査法人が残高確認を行うにしても、以前は窓口に出向いて残高証明請求をしなければならなりませんでした。現在は郵送で残高証明書の請求が可能となっていますが、他の金融機関とは少し違った手続が必要となります。郵送で残高証明の請求が可能となったのがいつだったのかを確認してみたところ、日本公認会計士協会から「ゆうちょ銀行への残高証明書請求方法の追加について」(自主規制・業務本部審理ニュース[No.1])が公表されたのが平成26年(2014年)12月26日で、平成27年1月より郵送での残高証明請求が可能となっていました。

上記の事案は平成26年6月末の残高に関するものですので、作業当時には、まだ郵送での手続は行えなかったということだと推測されます。また、銀行の残高確認は、もちろん預金残高が帳簿と一致しているかを確認するという意味もありますが、監査人からすると通帳では確認できないデリバティブ、借入、担保の有無などを確認するというほうが意味合いとしては大きいと考えられるので、ゆうちょ銀行であれば残高が確認できれば十分と考えて、会社が入手した証明書で確認するというというのも監査でなければ十分にありえることだと思われます。

裁判所は、契約の内容を内部統制の有効性の評価及び株式評価を内容とするものと認定した上で、「残高証明書又は通帳の原本を直接確認する義務の有無については、原告会社の内部統制の有効性評価の方法として、被告が用いたウォークスルーの手法は」、取引データ自体の誤りを発見することには重点が置かれず、また、その分析に預貯金残高の情報は用いられないとしたとのことです。

また、預貯金残高情報は財務情報として重要であるものの、内部統制の有効性の評価という観点からすると、収集した情報・資料を元に、実際の預貯金残高と帳簿残高の不一致が生じ得る仕組みになっていないかを検証すれば足りるというべきとし、収集資料の正確性に具体的な疑義が生じているような状況でない限り、収集資料の作成に偽装、不正が介在しないことの検証までは求められていないものと解すべきであるとしたとのことです。

その上で、「内部統制の有効性の評価に当たり、預貯金残高情報に関し、被告が自ら金融機関発行の残高証明書又は通帳の原本を入手して検証する方法だけでなく、原告から提供された写しを元に検証する方法も許されると解すべきであると、残高証明書等を直接確認する義務を負うものとは認められないとの判断を示した」とされています。

これにより、原告の債務不履行に基づく損害賠償請求は斥けられました。ただし、監査法人は、裁判に先立ち、原告から口座に関する偽装を見逃した責任があるなどとして既払報酬の返還請求に応じ、約544万円を返金したとされていますので、それなりに十分責任はとっていると個人的には感じます。

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