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年額8万円の報酬でも税理士に損害賠償責任は課せられます

報酬がいくらであろうと、契約に従って適切に業務を遂行しなければ債務不履行責任を問われるというのは当然ではありますが、興味をひく税賠訴訟の事例がT&A master No.845のニュース特集で取り上げられていました。

この事案は、会社が税理士の債務不履行(課税事業者選択届提出の有無の確認漏れ)により消費税等の還付を受けられなかったとして損害賠償請求を行ったが、これに対し税理士は債務不履行に基づく約105万円の損害賠償債務が存在しないことの確認および会社代表者に恫喝されたとして慰謝料300万円を求めた事案とされています。

結論としては、税理士の会社に対する損害賠償責任約30万円が認められました。

この会社は平成29年2月からバーの営業を開始し、初年度は約600万円の赤字となることから、税理士に法人税の確定申告と消費税の還付を依頼しようとし、使用する会計ソフトの税理士紹介サービスを利用し、原告の税理士と委任契約を締結したとのことです。

この契約の報酬は、年間6万円(税込)(年商5000万円まで)、消費税申告が必要な場合は年2万円(外税)で、サービス内容は「経理検査(仕訳間違いの検査)」「決算監査(異常値監査)」「税務署への届出書類の提出」等とされています。

年商5000万円までとはいえ、これだけの内容を年額8万円でやってビジネスとして成り立つのだろうかというのが率直な感想ですが、独立したばかりで顧客を開拓しなければならないというような状況であれば、とりあえずの入口としてこのような低価格の戦略をとることも仕方がないという状況も考えられます。

この事案では、委任契約を締結したのは、課税事業者選択届出書提出期限の11日前であったとされ、税理士は課税事業者選択届出書を提出するか否かを吟味するのは、1か月は必要であると主張したとされています。このほか、課税事業者選択届出書の提出義務者は会社であって、税理士に責任はないなどと主張したとされています。

これに対して東京地裁は、「委任契約の内容に消費税の還付申告が含まれていることは明らかであるとした上で、税理士が会社に代わって課税事業者選択届出書を提出する義務を負っていたか否かを検討し」、「①税理士のメールには、「サービス内容」として、「税務署届出書類一式は、弊社で作成して無料にてお届けします」と記載されている、②会社代表者は税理士事務所の従業員に対し、決算及び申告に際し会社側ですべきことがあるか問い合わせていることから、裁判所は、税理士は会社に対して少なくとも消費税の還付を受けるためには課税事業者選択届出書を提出する必要があることを説明し、提出の有無を確認する義務を負っていたと指摘」したとされています。

また、契約締結が届出期限まで11日しかなかったことについては、「会社が税理士に消費税の還付申告を依頼した事案であり、会社において課税事業者を選択することは決定済みであったといえるから、税理士において課税事業者選択届書を提出すべきか否かを吟味する必要はなく、税理士は会社に対し、消費税等の還付申告を受けるために必要な課税事業者選択届出書を提出しているか否かを確認すれば足りたというべきであるとした」とのことです。

仮に将来の計画をきちんとシミュレーションして何が有利なのかを検討するというのであれば、時間が必要ですが、単に課税事業者選択届出書を提出しているか否かを質問し、将来の計画を考慮した場合には課税事業者を選択すると不利になる可能性があるが課税事業者を初年度から選択するのかを確認しておくだけであれば、特に時間もかからず行えると考えられます。したがって、提出しているかどうかの確認を怠ったというのは税理士の落ち度といわれても仕方がないと考えられます。

また、裁判所が述べている「税理士のメール」が、委任契約締結前のサービス紹介のようなものであったのか、契約後のメールだったのかは明らかではありませんが、サービス紹介のようなメールやHPの記載についても、注意を要すべきとと改めて感じました(当然のことではありますが、結構よいことばかり書かれているようなこともありますので・・・)。

最後に、税理士側が請求した恫喝に対する慰謝料について、税理士は会社代表者から”「おたくの事務所、何があったのですか」「私の会社は他にもありますが、皆、あなたの税理士責任は当然だと言っていますよ。私は消費税還付金を当てにして、資金繰りをやってるんだよ。どうしてくれるんですか。」などと何度も言われ、恫喝したと主張”したとのことですが、これに対して裁判所は、「税理士に対する責任追及行為として社会通念上許容される限度を逸脱しているとはいえず、不法行為は成立しないとの判断を示し」たとのことです。

とはいえ、実態によっては不法行為として認定される可能性も当然考えられますので、責任追及する側も言動には注意を要します。それにしても、他にも会社を有しており懇意にしている税理士がいるであろうところ、会計ソフトの税理士紹介サービスで新たな税理士を使用したのは何故なのだろうというのは気なります。また、他に会社を保有し、かつ、消費税還付金を当てにして、資金繰りをやっているというほど消費税の仕組みを理解しているのであれば、届出が必要であるという点を理解していたのではないだろうかという気もします。

面倒な裁判に巻き込まれないためにも、簡単に確認できることをサボらない、勝手に思い込まないというのは重要なのでしょう。

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