KAMに関連して監査報告書の訂正が7件あったそうです
経営財務3469号のKAM早期適用の事例分析で、”「監査人の責任」区分の記載に注意を”として、2020年3月期の有価証券報告書に添付されていた監査報告書で、KAMを早期適用していないにもかからわらず、「監査人の責任」の区分でKAMに関する記載をしている事例が7社あったとのことです。
KAMを早期適用して監査報告書に記載する場合には、「監査人の責任」区分に、監査役等と協議を行った事項のうちからKAMを決定し、監査報告書に記載することが必要となりますが、KAMを早期適用しない場合にはこの記載は不要となります。
また、早期適用・原則適用を問わず、「報告すべきKAMがない」と監査人が判断した場合には、その旨を記載する必要があるとされています。現実問題として、KAMがないとされるケースはないはずといわれているので、この記載事例を目にする可能性は限りなく低いと考えられますが、仮に原則適用でそのような記載がされた場合には、遡って前年の監査報告書の記載は妥当であったのかについても気を配る必要があると考えられます。
なお、上記7社は、その後いずれも訂正報告書が提出され、KAMに関する記載が削除されているとのことです。
“この7件には大手監査法人も含まれていた。KAMの適用に際しては、監査人・企業ともに注意されたい”と述べられています。とはいえ、2021年3月期から強制適用となることからすれば、基本的には3月決算会社以外で、これからKAMを早期適用しようとする会社と対象はかなり限定されると考えられます。
訂正された監査報告書で削除された記載の事例は以下のとおりです。
(事例1)
監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当連結会計年度の連結財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
(事例2)
監査人は、監査等委員会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。
いずれも記載不要ということで削除された訂正報告書が提出されています。単にKAM適用後の文例をベースに作成してしまっただけなのかもしれませんし、当初はKAMを記載する方向ですすんでいたところ、最後に変更になって修正し漏れたということなのかもしれません。
監査法人の審査でも監査報告書の草案はチェックを受けているはずですが、同様の訂正が7件発生したということからすると、今のところ監査報告書は定型なので、あまりきちんとチェックされていなかったということではないかと推測されます。