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監査基準の改訂「その他の記載内容」につき監査人の手続を明確化

今年3月に公表され4月21日まで意見募集が御壊れていた「監査基準の改訂について(公開草案)」等が、2020年9月29日に企業会計審議会監査部会で審議され、意見募集に対して寄せられたコメント等をふまえ一部修正を行った上で、内容が確定しました。

リスクアプローチの強化も図られていますが、被監査側からすると「その他の記載内容」についての改訂の方が気になります。

「その他の記載内容」とは、「監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容」を意味します。
現行の監査基準では、財務諸表の表示と「その他の記載内容」との重要な相違は監査報告書の追記情報の一つとされていますが、国際監査基準720では、財務諸表の表示に加え監査人が監査の過程で得た知識と「その他の記載内容」との間に重要な相違があるか検討を行い、監査報告書に独立した区分を設けてその結果を記載する旨の改訂が行われていることを踏まえ、日本においても監査基準等の改訂が行われることとなりました。

1.監査報告書における独立区分の新設

「その他の記載内容」について、監査報告書で独立した区分を設け、以下の事項を記載することとされています。
①「その他の記載内容」の範囲
②「その他の記載内容」に対する経営者及び監査役等の責任
③「その他の記載内容」に対して監査人は意見を表明する者ではない旨
④「その他の記載内容」に対する監査人の責任
⑤「その他の記載内容」について監査人が報告すべき事項の有無、報告すべき事項がある場合はその内容

なお、意見を表明しない場合には、「その他の記載内容」については記載しないのが適当とされています。

2.「その他の記載内容」についての記載の性質及び手続

従来同様、「その他の記載内容」について監査人は意見を表明するものではないとされています。また、「その他の記載内容」の通読及び検討にあたっては、財務諸表監査の過程で入手した監査証拠等以外の新たな監査証拠の入手は求められていません。

現行においても「その他の記載内容」に関して、監査人には「通読」が求められ、場合によっては監査報告書への追記が必要とされていますので、手続的に従来と大きく変化することは想定されておらず、被監査側からしても基本的に対応に追加で手間がかかるということはないと思われます。

ただし、”監査人は、「その他の記載内容」の通読及び検討に当たって、財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しない「その他の記載内容」についての重要な誤りに気づいた場合には、経営者や監査役等と協議を行うなど追加の手続を実施することが求められる。「その他の記載内容」に重要な誤りがある場合において、上記の追加の手続を実施しても当該重要な誤りが解消されない場合には、監査報告書にその旨及びその内容を記載するなどの適切な対応が求められる”とされていますので、「その他の記載内容」に関連して追加の手続が実施されることはありえます。

3.非上場会社の場合の取扱い

「その他の記載内容」の関する監査報告書の記載については、非上場会社の場合であっても同様の取扱いが求められています。この点、コメント対応17では以下の様に記載されています。

監査基準は公認会計士監査のすべてに共通するものであるため、上場企業か否かにかかわらず、監査報告書までに「その他の記載内容」を入手していない場合でも、「その他の記載内容」の区分を設けることは求められます。
監査人は、経営者との協議により、予め「その他の記載内容」を入手する方法や時期を決定することが考えられます。特に非上場企業においては、監査報告書日までに「その他の記載内容」を入手できない場合もあると考えられますが、その場合は、監査報告書に入手する予定の「その他の記載内容」を記載することが考えられます。この取扱いについては、上場の有無によって変わることがないものと考えられます。

実務上は会社法の事業報告で問題が生じそうですが、この点、コメント募集の20で以下の様な意見が寄せられていました。

会社法上の事業報告は「その他の記載内容」の対象となると思われるが、監査人の監査報告書提出時点において、会社法上の事業報告の提出は制度的に担保されていない。事業報告が入手できない場合の対応等については今後の実務指針等の策定を待つことになるものと思われるが、根本的な原因は、会社法と金融商品取引法の両制度間におけるスケジュールが整合していない点にあると考えられる。この点を含め、両制度間で取扱いに整合性が取れていない事項についての一元化に向けた検討を行うことが、経営者・監査役等・監査人の負担軽減につながり、また、制度の実効性向上の観点からも望ましいと考えられる。

これに対する「コメントに対する考え方」は「貴重な御意見として承ります」となっています。上記の意見にもあるとおり、実務指針等でどのような対応となるのかが明らかにされると思いますので、それを待ちたいと思います。

4.適用時期

2022年3月決算に係る財務諸表監査からの適用が原則ですが、2021年3月決算から早期適用可能とされています。

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