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株主総会で限度額が決議され、取締役会で一任決議あれば、代表取締役社長による各取締役の個別報酬の決定は自由に行えるか

コーポレートガバナンスコードの影響などもあり、東証一部上場会社で報酬委員会(任意の委員会を含む)を設置している会社が直近で過半数となりました。また、令和元年会社法改正により、役員報酬に関連する新たな規制が施行予定となっています。

しかしながら、上場会社であっても、株主総会で決議された報酬枠の範囲内で各取締役の個別の報酬額の決定については取締役会決議により代表取締役社長に一任されているケースもあります。また、役員報酬の決定は、非上場会社においても問題となりうる事項であるところ、経営財務3476号、3477号において小林公明弁護士が、”代表取締役社長による各取締役の個別報酬額の決定はフリーハンドか”について検討している記事が掲載されていました。

結論としては、「取締役会から各取締役の個別報酬額の決定を一任された代表取締役社長は、個別報酬額を決定するに当たり善管注意義務等を尽くす必要があり、その義務に違反して会社に損害を与えたときは損害賠償を負うと考えられる」とのことです。

学説においては、総会決議の範囲内であっても「職責・能力に不相応に高額な個別報酬であれば、お手盛りであり、逆に不当に低ければその者のインセンティブを損ない、いずれも会社の不利益となるとする見解が有力となっている」(「会社法コントロール8巻」(商事法務)162ページ)とのことです。

裁判例(東京地裁平30.4.12)においても、以下のように判示されており、同様の考え方にたっているとのことです。

もっとも、このような再一任を容認すると、本来、会社の取締役会ないしその構成員である取締役が果たすべき代表取締役の業務執行の監視監督の機能が働かない状況の下で、再一任を受けた代表取締役は自らの報酬額まで決めることになることを考慮すると、取締役会から各取締役の報酬額の決定を再一任された取締役は、具体的な報酬額を決定するに当たり、他の職務を遂行する場合と同様、善管注意義務( 会社法330条 、民法644条)及び忠実義務( 会社法355条 )を尽くす必要があり、これらの義務に違反して会社に損害を与えたときは損害賠償義務を負うと解するのが相当である。

上記より、代表取締役社長は個別取締役の報酬額決定について善管注意義務等により損害賠償責任を負う可能性があるとのことですが、実際どのような場合に責任を負う事となるのかが問題となります。

経営財務の記事では、この点が争われた株主代表訴訟の事例が取上げられており、問題となった報酬決定が著しく不合理か否かについて、判決内容として記載されていた一部は以下のとおりです。

取締役会から各取締役の報酬額の決定を再一任された代表取締役が、具体的な報酬額を決定するに当たり、善管注意義務及び忠実義務を負うことは、前記認定・説示のとおりであるものの、各取締役の業績や活動実績をどのように評価し、当該取締役に対してどの程度の報酬を支給すると決定するかといったことは極めて専門的・技術的な判断である上、こうした評価・決定により、取締役をどのように監督しあるいは取締役にインセンティブを付与するかといった判断自体、会社の業績に少なからず影響を与える経営判断であるから、取締役会ないしそこから再一任を受けた代表取締役はそうした評価・決定をするにつき広い裁量を有するものと解されること、取締役が上記の評価・決定に当たり適切に権限を行使したか否かは、基本的には、株主総会における取締役の選任・解任の過程を通じて、株主が決すべきものであることからすると、本件において、被告Y1は、本件報酬決定に至る判断過程やその判断内容に明らかに不合理な点がある場合を除き、本件報酬決定を行ったことについて善管注意義務違反により責任を負うことはないと解するのが相当である。

そして、「本件報酬決定に至る過程で、会社の管理本部の従業員が被告Y1が作成した個別額の素案どおりに取締役の報酬を決定した場合のリスクについて外部の弁護士に照会した結果をも踏まえて検討し、Y1以外の取締役と協議しY1はその協議結果に沿って本件報酬決定をしたこと」、当該報酬を決定した時点で業績は前年を上回る見込であったことなどを認定したうえで、「リスクや特別手当の金額の妥当性等を十分検討した上で、業績が前年度を上回るという平成26年11月期(第113期)の業績予想を踏まえて本件報酬決定を行っているのであるから、本件報酬決定に至る判断過程やその判断内容に明らかに不合理な点があるということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。」としたとのことです。

上記から判断すると、「明らかに不合理」とされる可能性はかなり低いように感じますが、大前提としては責任を負う可能性があるため、小林弁護士は会社側として採るべき対応として以下のような点を挙げています。

①取締役の報酬限度額を増額する議案及び提案理由は、その後に予定される代表取締役社長による個別額決定と矛盾しないように記載すべき

これは例えば、取締役の員数を増員することを前提として報酬枠を増加させておきながら、員数は変更せずに各取締役の報酬額を増額させるようなことはしないようにすべきということです。変更前の総枠の範囲内で増額している場合には、説明は可能と考えられますが、誤解を招くようなことは避けるべきと考えられます。

②株主提案の否決は、株主の合理的意思を示すものとして会社側にとって有益

争いとなるような場合には、株主から役員報酬に関して株主提案がなされることが考えられますが、このような場合に、低い賛成率で当該提案が否決されている場合には、会社側の決定が明らかに不合理と判断される可能性が低くなるということです。

③個別決定のプロセスをきちんと整備するのが有益

「個別額決定の判断内容はもちろん、判断過程についても十分な情報収集とその分析権等(必要であれば外部の弁護士・公認会計士・アナリスト等の意見書の徴収)等により透明性を高める労と負担を惜しむべきではない」と述べられています。あくまで、一任決議で行うということをふまえると、社外取締役に意見を求めるとか、業界の水準等を調査して上で内規を整備・適宜改訂して、それに基づいて決定するというようなことが必要となるのではないかと考えられます。

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