エフオーアイの粉飾決算をめぐる主幹事証券の責任ー最高裁で弁論が開催
エフオーアイの粉飾決算をめぐり元株主約200人が主幹事証券(みずほ証券)に損害賠償を求めた事件において、2020年11月17日に最高裁で弁論が開かれたそうです。
高裁では主幹事証券の責任は認められなかったという結論であったはずと、以前の記事を確認してみると、2年以上前に”エフオーアイの粉飾-主幹事証券に責任認めず(東京高裁)”でこの件について記載していました。
エフオーアイ社は、売上の約97%が架空の売上でマザーズに上場した後、粉飾決算が発覚し、わずか7か月で上場廃止となった、ある意味伝説的な会社ですが、地裁では認められた主幹事証券の責任が、高裁では主幹事証券の責任が認められないとされていました。
今回弁論が開かれたことで、「原審の結論が見直される可能性が高まっている」(T&A master NO.859 「エフオーアイの粉飾決算事件、最高裁で弁論」)とのことです。判決は2020年12月22日が予定されています。
金商法21条1項4号では、有価証券届出書の重要な事項について虚偽記載等があった場合には損害賠償責任を負うこととされているが、虚偽記載であることを知らず、かつ財務計算に関する書類に係る部分以外は相当な注意を用いらにもかかわらず知ることができなかった場合には免責することができる(金商法21条2項3号)とされており、主幹事証券の免責が認められるかが争点となっています。
T&A masterの記事によると、株主らの主張は以下のとおりです。
主幹証券会社は粉飾決算の存在を疑わせる事情が存在する場合には、虚偽記載等の存在可能性を打ち消すのに十分な程度の注意を尽くして審査を実施する義務を負っていると主張。金商法21条2項3号においては監査済みの財務諸表部分は「相当な注意」の対象ではないが、この部分についても財務諸表の記載が虚偽であることを疑わせる事情が存在する場合は公認会計士の監査への信頼という前提が成立しないと述べた。また、主幹事証券会社は預金通帳の原本確認、残高確認書の確認、注文書の原本確認を実施するなど、虚偽記載の存在可能性を打ち消すのに十分な程度の調査を実施すべきであったとした。
これに対し、主幹事証券は以下のとおり主張したとされています。
一般に要求される注意を持って当該嫌疑が払拭されたと合理的に判断するために必要な限度での追加調査を実施し、追加調査の結果等に基づき、会計監査の信頼性に対する嫌疑が払拭されたと判断したことが合理的であったとすれば、主幹事証券会社が会計監査の結果を信頼することができると主張。仮に有価証券届出書に虚偽記載があったとしても、「相当な注意」を用いたにもかかわらず、虚偽記載をしることができなかったというべきであると述べた。
エフオーアイ社の場合は、匿名の投書があった状況において、売上の約97%が架空であったというすさまじい粉飾で上場しているので、株主らの立場とすれば、主幹事証券に責任がないというのはありえないという気持ちはよくわかります。
とはいえ、株主らの主張する「預金通帳の原本確認、残高確認書の確認、注文書の原本確認」を、会計士ではない主幹事証券の審査担当者が行っていれば、容易に粉飾を発見できたといえるのか、また、仮に「預金通帳の原本確認、残高確認書の確認、注文書の原本確認」を実施することが必要であるとした場合であっても、主幹事証券としてどの程度実施すれば十分だと判断されるのかについては興味があるところです。
主幹事証券の責任が認められるかどうか12月22日の判決を待ちたいと思います。