閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

テレワーク勤務解除に労働契約上の根拠は必要か

ビジネスガイド2021年1月号に弁護士の向井蘭氏による”「テレワークOK」な社員を出社させられるか”という特集記事が掲載されていました。

テレワークを命じたものの拒否して出社を継続した場合や逆にテレワークを解除して出社を命じたものの出社を拒否したような場合にどうなるのかという点について述べられていました。

会社が従業員にテレワーク勤務を命ずる、あるいは、テレワーク勤務を解除し出社を命ずる権限があるのか、権限があるといえるためには労働契約上の根拠が必要となるのかについて、以下の二つの考え方があると述べられています。

一つ目は、「配転命令の一態様として労働契約上の根拠が必要」という考え方で、テレワーク勤務も配転と同じであるので労働契約上の根拠が必要であり、雇用契約書が就業規則に明記しなければならないとする考え方とされています。

一般的に、配転命令についても就業規則に織り込まれていることが多いと思いますので、この考え方によっても形式的には問題となるケースは少ないのではないかと思われます。

二つ目は、「業務命令の一つとして行うことができるので、労働契約上の根拠は不要」という考え方とされています。

新型コロナウィルスの感染拡大に伴いテレワークを実施することになったのは、多く会社においてとりあえずの一時的な措置と考えられていたのではないかと思いますので、個人的な感覚としては業務命令の一つという位置付けの方がしっくりくるように感じます。もっとも、一時的な措置ではなく、継続してテレワークを原則とするというような制度を導入する中で、一部の従業員には出社を義務付けるというようなケースになると、一つ目の考え方の方が妥当であるように感じます。

「いずれの考え方が正しいのかはまだわかっていない」とされていますが、今後、テレワークを拒否する、あるいは、出社を拒否するというようなケースが裁判で争われる中で、一定の方向性が示されることになりそうです。

テレワークを拒むというケースもないとはいえませんが、一般論としては、テレワークをしている従業員に出社を命じたところ拒否されるということの方が起こりうるケースであると想定されます。

使用者は労働者に対して、業務遂行全般について必要な指示・命令をする権限を有しており、労働者は個々の業命令について、就業規則の合理的な規程に基づく相当な命令である限り、その命令に従う義務を負うものとされています。

しかしながら、一方で「業務命令が必要性を欠く場合や、労働者がが受任できる限度を超えて相当性を欠く場合には、労働者はその業務命令に従う義務を負わない」ことになるとされています。

そのため新型コロナウィルス感染症拡大が懸念される状況では、業務命令の必要性と相当性について考慮する必要があり、業務命令の相当性について、以下の諸事情を総合して検討することになると考えられるとされています。

①具体的な感染リスクの蓋然性
②感染拡大防止に向けて使用者が講じている措置
③当該従業員の健康状態

①については、当該地域やオフィスビル内で感染が拡大している状況なのか、不特定多数の人と接するような業務なのか、移動が必要な場合にどのような移動手段によるかなどを総合的に判断することになると考えられます。例えば、営業であっても電話やWebが中心であれば相対的にリスクは低いと考えられますし、移動が必要な場合、公共交通機関を利用するよりも社用車で移動する方が一般的にリスクは低いと考えられます。

②については、マスクの着用義務付け、消毒液の準備、座席の配置あるいはアクリル板等での隔離など一般的に感染を防止するために必要と考えられる措置がどの程度講じられているかを考慮することになると考えられます。

③については、基礎疾患がある方や高齢の方は感染により重症化しやすいと言われているので、本人の年齢や健康状態を考慮した場合に、感染した場合のリスクがどの程度あるのかなどを考慮することになると考えられます。

上記のように考えると①~③の相当性については比較的説明しやすいように思いますが、必要性については意外に説明が難しいというケースもあるかもしれません。業務システムの関係上、出社しなければ業務が行えないとか、教育の都合上、出社してもらいたいとか、テレワークでは十分な成果が出せないので適切に管理監督して業務を行わせるために出社してもらいたいというようなことがあればよいですが、テレワークをやってみたら、テレワークで十分仕事ができるというような場合には、必要性がないとして出社を命ずることができないということになってしまう可能性も考えられます。

もっとも新型コロナウィルスの感染が拡大している状況下で、感染を防止するためというそもそもの必要性がなくなれば、テレワークで成果が挙げられているからといって出社を拒めるということにはならないと考えられます。

とはいえ、多様な働き方の実現は最近のテーマですから、新型コロナウィルスの感染が無事終息したとしても、テレワークの在り方についても継続して検討されていくことになると考えられますので、継続的に適用される制度としてテレワークをどのように考えるのかというのをしっかり検討していく必要がありそうです。

関連記事

  1. 「インバスケット思考」を読んで

  2. 労働保険料の年度更新-「支払いが確定した賃金」の意味は?

  3. 労働基準法の管理監督者性はやはり厳しいと感じた判例ー日産自動車事…

  4. 社外役員の報酬の平均はどれくらい?

  5. 最高裁判例を参考に事業場外みなし労働制の適用範囲を再確認-阪急ト…

  6. 小規模企業共済制度の改正




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,947,564 アクセス
ページ上部へ戻る