株式評価損の過年度否認額を判断基準変更時に損金算入できる可能性
日経平均が3万円を超えて、全体としては株価は好調という状況となっていますが、コロナ禍の影響が大きくマイナスに作用している会社の場合は、評価減が必要なケースもあると思います。
上場有価証券との評価損の取扱いについて税務通信3642号の税務の動向に「株式評価損の過年度否認金 変更後の基準で損金算入も」という記事が掲載されていました。
上場有価証券等の評価損の取扱いについてはリーマンショック時に「上場有価証券の評価損に関するQ&A」が公表されており、上場会社等については、監査法人のチェックを受けて継続的に使用される一定の形式基準を用いることも認められることが示されています。
上記の記事によると、リーマンショックの際にはQ&A公表のタイミングが4月に入っていたこともあり、基準の策定・変更を見送った企業も多いとされ、今回のコロナショックを契機として、基準の策定・変更を行う企業も一定数あるようだとされています。
そして、新たに策定・変更した基準に基づいて、過年度の評価損否認額を損金算入することができるのかが議論になっているとのことです。
この点、同誌が取材したところによれば、評価損を否認した事業年度において回復可能性を適正に判断していたか否かによって異なるとされています。すなわち、評価損を否認した事業年度以降の事業年度において継続的に、税務上、株価の回復可能性についての判断を適正に行っていた場合において、当期に新たに合理的な基準を策定・変更し、その基準にしたがって判断した結果、回復可能性がないと判断した場合には、損金算入が可能とのことです。
とはいえ、会計上は一定の形式基準で過年度に減損等を実施していながら、税務上は毎期継続して回復可能性を合理的に判断していたというケースがどれくらいあるのかは疑問です。合理的な判断といえるかはわかりませんが、会計上は過去2年間にわたり帳簿価額の50%以上下落で減損処理を実施し、税務上は会計よりも保守的な基準として75%以上下落が過去2年間にわたり継続した場合に損金算入するというような基準があって、税務用の判断基準は満たしていなかったというようなことはあるのかもしれません。
一方、評価損を否認した事業年度において、回復可能性をきちんと判断せずに、とりあえず加算しておいたというようなケースでは、損金算入を行うためには更正の請求が必要となるとのことです。更正の請求をしてまで損金算入を行うというのはハードルが高く、現実問題としてこちらの選択肢はほとんどないと考えてよいのではないかと思います。