「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」が公表されました
2021年1月27日にASBJは「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」(実務対応報告第41号)を公表しました。
改正会社法によって、上場会社が取締役報酬として株式発行をする場合に、金銭の払い込み等が不要になったことに対応するもので、適用時期は、改正会社法施行日(2021年3月1日)以後に生じた取引から適用するとされています(対応報告23項)。
会計処理としては、ストック・オプション会計基準に準じた処理となっていますので、基本的にストック・オプションの会計処理をイメージすればよいということになります。
すなわち、基本的な会計処理の主なものは以下のとおりです。
➀取締役に対して新株を発行し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービスはその取得に応じて費用として計上する(5項)
②各期間の費用計上額は、株式の公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額とする(6項)。
③株式の公正な評価額は、公正な評価単価に株式数を乗じて算定する(6項)
④公正な評価単価は、付与日において算定し、原則としてその後は見直さない(7項)
⑤失効等の見込については株式数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない(7項)
無償発行には事前交付型と事後交付型が考えられますが、事前交付型の場合の仕訳(新株発行)は以下のようになるとされています(設例1)
・報酬費用の計上時
借)報酬費用 XXX 貸)資本金 XXX
年度通算で費用が計上される場合は対応する金額を資本金又は資本準備金に計上する(9項)こととされていますので、上記の貸方は、半分を資本準備金とするということも考えられます。
・無償取得などにより年度通算で戻入が生じた場合
借)その他資本剰余金 XXX 貸)報酬費用 XXX
「その他資本剰余金」がマイナスとなった場合の取扱いは、自己株式会計基準12項に従って処理することとされていますので(9項)、繰越利益剰余金から控除することとなります。
次に、事後交付型(新株発行)の場合の会計処理は以下のようになるとされています(設例2)。基本的な考え方は同じですが、事後交付型の場合は、費用計上時に株式が未発行のため貸方の科目をどうするかがポイントとなると考えられます。
・報酬計上時
借)報酬費用 XXX 貸)株式引受権 XXX
事後交付型の場合は、「株式の発行等が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上する」(15項)とされていますので、上記のような仕訳となります。その他は、事前交付型の場合と同様です。
会社法改正後は該当する取引がそれなりに出てくると思いますので、おさえておきましょう。