2020年監査人の交代は142件(経営財務誌調べ)
経営財務3497号に2020年の監査人の交代件数を調査した結果が掲載されていました。経営財務誌が2020年中に監査人を交代した全上場会社(外国会社、TOKYO PRO Marketを除く)を対象として調査したもので、適時開示をしていない会社は対象外とされています。
結果としては、監査法人の合併により変動した2社を除くと142件で前年と同数となったとのことです。
業種別には、主に情報通信業22社、小売業16社、卸売業15社、サービス業15社となっており、この4業種が多い傾向は昨年から変化していません。2019年は機械が13社で卸売業と同数となっていましたが、2020年は上記の4業種に化学、電気機器と続き、機械は7社となっています。
市場別にみると、東証一部が56社で最多となっており、JASDAQが34社、東証二部が26社、マザーズが20社となっています。2020年末の上場企業数は、東証一部が2186社、東証二部が475社、JSADAQ(スタンダード+グロース)704社、マザーズ346社となっていますので、おおむね各市場に上場している会社の数による違いといってよさそうです。
異動前後の監査法人の規模で分類した結果の主なものは以下のようになっていたとのことです。
大手→中小:42社
大手→準大手:28社
大手→大手:26社
中小→中小:29社
ここでいう大手は、あずさ、トーマツ、EY新日本、PwCあらたの四法人で、準大手は、仰星、三優、太陽、東陽、PwC京都の五法人、中小は上記以外とされています。
2019年も大手→中小が30件で最多ではありましたが、大手→大手、大手→準大手ともに25件でそれほど差はありませんでした。それとくらべると2020年は大手→中小の割合が増加したといえます。
気になる監査人交代の理由ですが主な内容は以下のとおりとのことです。
・監査報酬の増額・改定・相当性:78件
・事業規模・事業展開等:74件
・継続監査期間の長期化・考慮:70件
・新たな視点・異なる視点への期待:62社
上記4項目に続く5番目は「監査工数の増加」ですが17件と上記4項目とは大きく開きがあります。
継続監査期間を理由とする交代について、期間別に件数を集計すると11年~15年が20社で最も多く、16年~20年が8件と次に多い結果となっています。現場担当者からすると、監査人を変更するのは色々な説明を一からし直さなければならなかったりする可能性も高いので、かなり面倒だと思いますが、15年に1回位ならあってもよいかもしれません。
3000社以上の上場会社があれば、年間150社監査人が交代しても5%程度ですので、来年以降もこれくらいの数の交代は発生するのではないかと思われます。