2021年3月期有価証券報告書、金融庁レビューの重点テーマ審査は?
2021年4月8日に金融庁から「有価所見報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について」および「有価証券報告書レビューの実施について」が公表されました。
これによると、2021年3月以降の金融庁の有価証券報告書レビューの重点テーマは以下の2つとされています。
・新型コロナウイルス感染症に関する開示
・IFRS15「顧客との契約から生じる収益」
IFRS15については「主に指定国際会計基準を任意適用する会社が対象」とされていますが、重点テーマがIFRSというのは目新しい感じがしました。とはいえ、日本基準でも収益認識会計基準の原則適用がはじまることとなり、日本基準も基本的にIFRS15がベースとなっているという点からすると、日本基準の収益認識会計基準の重点審査に備えた情報収集という側面もあるのではないかと思います。
一方、新型コロナウイルス感染症に関する開示については、「将来の見通し等の妥当性自体を審査することは予定していません」とされ、「企業間で異なる将来の見通し等がありうるとの前提のもと、それらの企業特有の状況や考え方を投資家等が十分に理解できるように情報が具体的に開示されているかどうかを審査します」とされています。
なお、「新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の開示」は昨年の審査対象となっており、その結果として「追加情報の記載内容の詳細さには幅があるものの、多くの提出会社が追加情報を記載しており、投資家に十分な情報を提供する姿勢が見られた」とのことです。
追加情報の記載率は3月決算会社の場合、2020年3月期の有価証券報告書で70.7%とされ、1Q報告書73.0%、2Q報告書75.5%、3Q報告書74.7%となっていたとのことです。追加情報を記載していない会社のうち79%(3月決算会社の数値)は、調査に対して「新型コロナウイルス感染症の影響が軽微」と回答したとされ、「追加情報を記載していない会社においても記載要否については慎重な検討が行われたことが推定される」とされています。
また、2021年3月期末から適用される企業会計基準第31 号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」では、重要な会計上の見積りについて、以下の様な事項を注記することが要請されているため、新型コロナウイルス感染症の影響に重要性があると判断される場合には、従来の開示よりも充実した開示が求められるとされているため注意が必要です。
・当年度の財務諸表に計上した金額及び
・当年度の財務諸表に計上した金額の算出方法
・当年度の財務諸表に計上した金額の算出に用いた主要な仮定
・翌年度の財務諸表に与える影響、等
一方で、新型コロナウイルス感染症の影響に重要性がないと判断される場合にも、「引き続き追加情報として開示することが有用な場合がある。」とされていますので、重要性がないと判断した場合もその旨を記載しておくというのが無難な対応といえそうです。