自社株等対価M&A特例適用第1号はGMOインターネット
T&A master No.887に「GMO、現金+SOで自社株対価M&A特例」という記事が掲載されていました。
この記事によると、改正会社法で導入された株式交付をGMOインターネット(東証一部)とEストアー(JASDAQ) の2社が実施したとのことです。
両社とも簡易株式交付(株式交付親会社の純資産の20%までの財産交付にとどまる株式交付)によるものとされていますが、被買収企業株主における株式の譲渡損益の繰延の適用を受けることができるのは、GMOインターネットのみのため、GMOインターネットが当該特例適用第一号となったとされています。
この特例は令和3年度税制改正として株式対価M&Aを促進するための措置が創設されたことによるもので、一定の要件を満たせば、被買収企業の株主における株式の譲渡損益の繰延が認められるというものです。
譲渡損益の繰延が認められるためには、対価として交付を受けた資産の価額のうち、「株式交付親会社株式以外の資産」の割合(混合対価割合)が20%以下であることが必要とされていますが、Eストアーはこの要件を満たさないので課税の繰延の特例が適用されないとのことです。
すなわち、同社の実施した株式交付における株式対価の総額は「39,109,775円」、現金対価の総額は「91,257,600円」とされていることから、混合対価割合「91,257,600/(39,109,775+91,257,600)」が約70%となり20%を上回るため課税繰延の要件を満たさないとされています。
一方で、GMOインターネットが実施した株式交付では、「株式交付親会社株式以外の資産」として現金のほか、新株予約権が交付されているものの、混合対価割合が20%以下にとどまっているため、こちらは課税の繰り延べ特例の対象となるとされています。
一般論としては課税を繰り延べられるなら繰り延べた方が有利ということが多いと考えられるものの、事情はそれぞれだと思いますので、課税される(あるいは繰延べられる)が事前にきちんと想定できているということがより重要だと考えられます。
上場会社にとっては使い勝手のよい仕組みだと思いますので、今後、多くの事例がでてくることが想定されます。