社会保険等で引き続き押印が必要な手続きは何?
新型コロナウィルス感染症拡大を契機として、行政手続きについて押印が不要となったものが多いですが、一方で、引き続き押印が求められている手続きもあります。
ビジネスガイド2021年8月号の「行政手続きの押印廃止に伴う例外的取扱いの留意点」(特定社会保険労務士 専田 晋一)という記事で引き続き押印が必要とされている主な手続きがまとめられていたので、紹介します。
1.健康保険(協会けんぽ)
①高額療養費支給申請書
原則として申請者の押印は不要ですが、住民税非課税者については、居住地の市町村長の非課税証明の印が必要とされています(非課税証明書を添付する場合を除く)
②限度額摘要・標準負担額認定申請書
①と同様とのことです。
③出産育児一時金申請書・一時金内払依頼書・差額申請書
出産の事実について医師の証明を受けられない場合について、出生届出地の市区町村長の印が必要となります。
④保険料口座振替依頼書・自動払込利用申込書
金融機関の確認印・本人の届出印(銀行印)が必要となります。
上記③は例外的な場合、④は当然必要だと思いますので、税と社会保障の一体改革という観点では、手続き的に①および②についてもスムーズに適用できるようになったらよいと思います。
2.年金関係(日本年金機構)
日本年金機構関係も、押印が必要なものとしてのこっているのは保険料の口座振替など、金融機関向けの書類となっています。このほかでは「委任状(年金分割の合意書請求用)」について引き続き押印が求められていますが、勝手に分割されたというようなことがなるべく起きないようにするため、これは内容的に仕方がないかなと思います。
3.雇用保険(ハローワーク)
事業所設置後の手続きの真正性を担保するための「印影」の登録は必要とされていますが、資格の得喪などの手続きのほとんどは押印廃止となっています。
引き続き押印が必要とされている届出には以下のようなものがあります。
・雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
・高年齢雇用継続給付支給申請書(初回分のみ)
・再就職手当支給申請書(事業主の証明)
など
4.労働基準法関係(労働基準監督署)
労基法関係の様式・申請書面も原則として押印が廃止されています。
労基法関連の申請書面は色々ありますが、頻出のものといえば36協定と就業規則の意見書ではないかと思います。
36協定の改定様式の施行日は2021年4月1日からとなっており、従前からの変更点としては、
・36協定届について使用者の押印及び署名が不要となった
・36協定の適正な締結に向けて労働者代表についてのチェックボックスが新設された
ということがあります。
後者は以下のように、様式の下の方に確認のためのチェックボックスが新設されています。
上記はわかりやすいのですが、最初の点については、誤解してしまう可能性があるので注意が必要です。使用者の押印及び署名が不要となったのは「36協定届」であり、「36協定」の締結にあたっては、労使双方の合意がなされたことが明らかとなるようにする必要があります。
そのため、厚労省のパンフレットでは、「36協定と36協定届を兼ねる場合の留意事項」として「労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法(記名押印又は署名など)により36協定を締結すること」と記載されています。
上記の記事においても「実務上は、これまでと変わらない以下の方法によることになります」として、以下の二つが示されています。
➀様式に労使の署名押印がなされたものを提出する
②様式に労使の署名・押印がなされた協定書を添付して提出する(この場合、様式に署名・押印は不要)
また、就業規則の意見書については、過半数労働者の記名のみでよいとされましたので、署名押印は不要ということになります。
全体からみれば、押印が必要とされるものがかなり少なくなっているという印象ではありますが、上記のように一部押印等が必要なものが残っていますので、注意しましょう。