監査法人アリアの国に対する損害賠償請求が棄却されました
公認会計士・監査審査会により勧告を受けた監査法人アリアが国に対して国家賠償法に基づき損害賠償5000万円超を求めた事件で、東京地裁は2021年2月24日に、アリアの請求を棄却する判決を下したそうです(T&A master NO.893「東京地裁が監査法人に対する審査会の勧告内容の適否を判断」)。
この事案は、公認会計士・監査審査会は、同法人の運営が著しく不当なものと認められるとして公認会計士法41条の2に基づき行政処分その他の措置を講ずるよう金融庁長官に対して勧告行ったものです。
ここであらためて詳細な内容を取り上げることはしませんが、監査法人にとってはかなりイメージの悪い内容でした。これに対して、アリアは当該勧告が真実ではなく、名誉及び信用が毀損されたとして、国に対して不法行為に基づき公表の差止め及び国家賠償法に基づき損害賠償金5000万円超の支払を求めていました。
結論としては、前述のとおり、同監査法人の請求は棄却されました。
裁判所は、審査会の各認定の違法性については、審査会が勧告の当時入手し又は合理的な調査活動によって入手可能であったと考えられる資料に基づき、各認定をしたことが不合理であるということができるか否かにより決すべきであるとしたうえで、「会計事務所やコンサルティング会社との間で独立性の確認を行っていないなどの認定や、監査業務の新規受託時の対応について複数の不備が認められるなどの認定についてはすべて不合理とはいえないと判断」したとのことです。
また、勧告内容の公表については、「勧告は審査会のホームページ上で掲載される方法で公表されていることが認められ、公表の方法が相当性を逸脱したものということはできないと指摘」したうえで、「原告の勧告内容を知った顧客等の原告に対する評価に影響を及ぼすとしても、審査会の認定して内容が不合理なものでない限り、看過できない程度のものとは認め難いとした」とのことです。