東証一部上場会社の約3割がESG、SDGs等を有報で開示
経営財務3524号にPwCアドバイザリー合同会社が9月16日に公表した「有価証券報告書から読み解くコーポレートガバナンスの動向2021~テキストマイニングによる分析」の結果が取り上げられていました。
これは、2021年3月31日以降終了する事業年度に係る有価証券報告書を6月末までに公表した東証一部上場会社のうち、過去5期連続して有価証券報告書を公表している1,422社を対象とした調査によるものとされています。この調査によれば経営方針、経営環境及び対処すべき課題等において「ESG」、「SDGs」、「脱炭素(またはカーボンニュートラル)」に関する取り組みの内容等の記載が、2017年では、それぞれ0%~2%であったものが2021年には24%~30%まで大幅に増加したとのことです。
改訂CGコードではプライム市場の上場会社に対して気候関連財務情報開示タスクフォース等の開示の質と量の充実を進めるべきとされていることなどから、今後も「ESG」なども含め何らかの開示を行う上場企業の割合は増加することが予想されます。
なお、事業等のリスクにおいて「気候変動」に関する記載も2017年の2%から2021年の23%に増加しているものの「気候変動をリスクと捉えている」旨の記載にとどまる会社が多いとされています。
上記のような記載が増加傾向にあるというのは個人的な感覚に一致していたものの既に3割近くが記載をおこなっているというのは思っていたよりも多いなというのが個人的な感想です。ためしに、21年3月決算会社の有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で「ESG」で検索してみると406社がヒットしました。
ただし、例えば「株式会社東京証券取引所の市場区分見直しも予定されている中、コーポレートガバナンス体制についても、しっかりと取組むとともにESG経営、SDGs推進についても進めてまいります。」、「新中期経営計画策定に向けて、ESG経営の実践に全力で取組んでまいります。当社はESG経営の実践は大きなビジネスチャンスであり、企業価値向上のため、役職員が一丸となり職務に取組む必要があると認識しております。」というような記載で検索にひかかったものもあり、現段階においては有報で「ESG」「SDGs」という単語を用いた会社が約3割あったという程度で、充実した記載はまだそれほど多くないととらえておいてよさそうです。
もっとも、今後徐々に各社の記載内容が充実していくと考えられますので、何らかの取り組みを行っている会社はどのような内容を開示していくのかをしっかり検討していく必要があると考えられます。