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重要な会計上の見積り開示項目-連結では平均1.7個

2021年3月期から適用開始となっている「会計上の見積りの開示に関するに会計基準」に関連して、旬刊経理情報の10月10日号で、JPX400に採用されている3月期の有価証券報告書を分析した結果が掲載されていました。

感覚的に項目数としては1個~2個が多かったという印象でしたが、上記の記事によれば、連結財務諸表における記載項目は平均で1.7個、個別財務諸表では平均1.2個であったとされています。

記載されている項目数については、この基準における開示目的が、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することとされていますので、重要度という観点から一般的にそれほど数が多くなることはないと考えられます。

基準上も、結論の背景において、識別する項目の数について、「翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある項目を識別するとしていることから、比較的少数の項目を識別することになると考えられる。」(基準25項)とされていることから、適用2年目になったからといって項目数が増加するという性質のものではないと考えられます。

記載されている項目の内容は、おそらく多くの方が想像するであろう項目が多数を占めています。すなわち、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、のれんの評価、棚卸資産の評価、工事進行基準などです。なお、個別財務諸表では、のれんの評価にかわり有価証券の評価が加わっています。

この記事では上記で挙げた項目以外に「その他」が106個あるとされていますが、貸倒引当金、退職給付、工事損失引当金、その他引当金などが含まれていると考えられます。

注記として記載する項目としては、基準等で算出方法、主要な仮定、翌年度の財務諸表に与える影響が挙げられていますが、チェックリストとして用いられるものではなく、企業の置かれている状況に即し、開示項目に照らして注記すべき事項を判断する必要があるとされていますので、必ずしもこれらをすべて記載しなければならないというものでもないということになります。

そこで、2022年3月決算会社の有価証券報告書の連結FSの重要な会計上の見積りの注記で「重要な会計上の見積り」を検索してみると1908社がヒットしました。次に「算出方法」、「主要な仮定」、「翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響」で検索してみたところ、それぞれ688社、842社、488社となっていました。ちなみに「翌年度の連結財務諸表に与える影響」も92社ヒットしました。

このようにみると、むしろ基準で例示されている名称をタイトルに使用して記載しているというケースの方が少ないということのようです。上記で気になったのは「翌連結会計年度の財務諸表に与える影響」でどのような内容を記載しているのだろうかという点です。固定資産の減損やのれんの評価であれば、感応度分析を行った結果を記載するというようなことが考えられますが、これを行っている会社が数多くあるのだろうかというのが気になったので、サンプルでいくつか確認してみたところ、そのような開示はほとんど見当たらないといって良さそうでした。

記載されている内容の多くは、追加で減損や評価損が発生する可能性があるというような内容で、金額は特に示されていないケースが一般的でした。

では、「算出方法」、「主要な仮定」、「翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響」のような項目を使用していない場合、どのような記載になっているのかですが、例えばANAホールディングスでは、繰延税金資産の回収可能性について「(2)見積りの内容に関するその他の情報」として以下のとおり記載しています。

 

当社グループは、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染拡大に伴う航空旅客需要の大幅な減少の影響により、税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産219,618百万円を計上しています。
 当社および一部の国内連結子会社は連結納税制度を適用しており、連結納税制度の適用対象法人においては、法人税(国税)は連結納税グループの将来課税所得等に基づき回収可能性の判断を行い、地方税は各法人の将来課税所得等に基づいて、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っています。税務上の繰越欠損金については、予測される将来の課税所得の見積りに基づき、税務上の繰越欠損金の控除見込年度および控除見込額のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上しています。
 控除見込額のスケジューリングの基礎となる将来課税所得のうち、重要な割合を占めるANAホールディングス株式会社および全日本空輸株式会社の将来課税所得は、国際旅客は2024年3月期末において2019年の水準に需要が回復し、国内旅客は2022年3月期末において2019年の水準に需要が回復するとの仮定をおいた将来計画に基づいて見積もっています。
 当該仮定は不確実性が高く、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

また、日産自動車歯固定資産の減損損失に関して「(2) 識別した項目に係る重要な会計上の見積りの内容に関する情報」として以下のとおり記載しています。

 

当社グループは、事業セグメント(自動車・販売金融)及び相互補完性を考慮した地域区分に基づいて資産のグルーピングを行い、事業用資産の減損の兆候の判定、認識及び測定を行っている。減損損失の認識及び測定において将来キャッシュ・フロー及び正味売却価額を、減損損失の測定において割引率を合理的に見積もっている。
 将来キャッシュ・フローの見積りに使用される前提は、経営会議において承認された事業計画に基づいており、過去のマーケットシェアの状況や利益率、第三者による予測データを参考にした地域毎の市場成長率、新型コロナウイルス感染症拡大等を含めた関連する市場動向や現在見込まれる経営環境の変化等を考慮している。正味売却価額の算定においては、不動産鑑定評価額等を参照するほか、一般に入手可能な市場情報を考慮している。割引率は、加重平均資本コストを基に、各国のカントリーリスク等を考慮して算定している。
 当連結会計年度末の連結貸借対照表に含まれる自動車事業の事業用資産の残高は2,359,670百万円である。当連結会計年度末において、一部の資産グループについて新たな減損の兆候があったが、減損損失の認識の判定を行った結果、当資産グループからの減損損失の認識は不要と判断した。なお、地域毎の将来キャッシュ・フローの見積りは、2020年5月に公表したNISSAN NEXTを基礎としている。
 資産グループに関連する市場動向、経済環境や会社の事業計画の前提条件に重要な変化が生じ、将来キャッシュ・フローや正味売却価額を修正した場合には、固定資産の減損損失を新たに認識もしくは追加計上する可能性がある。

 
対象となるものの金額をどこに記載するのかという違いはありますが、記載内容としては、「算出方法」、「主要な仮定」、「翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響」について述べられていることが確認できます。あえて「算出方法」はこれ、「主要な仮定」はこれなどとタイトルを付さなくても読めばわかるので、上記のような記載が多くなっているということのようです。

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