無償交付も現物出資型のRSも退職給与としての取扱いは同様
2021年6月の法人税基本通達の一部改正によって、譲渡制限付株式は、法人税法上退職給与として損金算入が認められなくなりました。
この改正の理由として、令和元年改正会社法によって、企業から役員への株式の無償交付が可能となったこと及びこの改正に伴ってASBJから無償交付型のRS等の会計処理が公表されたことが挙げられています。
従来から役員が受ける報酬債権を現物出資しそれと引き替えにRSを取得するといういわゆる現物出資型のRSが実務としては存在し、会社法が改正され株式の無償交付が可能となった後も、従来の現物出資型の理論構成でRSを交付することは可能とされています。
理論構成はともかく経済的にやっていることは同様なので、どちらであっても法人税法上の取扱いに差はないだろうと思う一方で、通達の改正が株式の無償交付が認められたことを1つの理由としているのであれば、現物出資型のRSの場合は取扱いが異なるのかも知れないという一縷の希望を抱いたりします。
この点について、税務通信3681号の記事では、「無償交付型のRSのみならず、”現物出資型のRS”も含まれるのか疑問視する向きもあるところ、前述の会計処理を行う”現物出資型のRS”についても、対象範囲に含まれるとのことだ」とされています。
ここでいう前述の会計処理とは、現物出資された報酬債権の額を前払費用等として計上した上で、その前払費用等を譲渡制限期間(役務提供期間)で按分し、株式報酬費用として計上するとういう処理を指しています。
役務対象期間にわたって費用処理するのであれば、一時に費用処理が認められる法人税法上の退職給与とは異なるということのようです。
よって、無償交付であろうと現物出資型のRSであろうと、所得税法上は退職所得として取り扱うことができるものであっても、法人税法上の退職給与とは認められず、損金算入するためには事前確定届出給与か事前の届出不要な事前確定給与に該当させる必要があるとのことです。
通達の改正は、2021年6月25日以後に開始する会計期間に支給決議したものに適用されるものであるため、12月決算会社は2022年3月支給決議分からこの改正の適用をうけることとなります。
事前の届出不要な事前確定届出給与に該当させるための手続は特にむずかしいものではないと思いますが、必要とされる手続期限を超えてしまうとどうにもならないので、注意が必要です。