満期保有目的債券の減損処理-東京電力の社債は瀬戸際?
昨日の日経新聞のWeb版で、「額面割れの東電債、減損1.5兆円の瀬戸際」というタイトルが目に入ったので内容を読んでみました。
まず、残存5年の国債と東電の社債の利回りを比較するとプレミアムが4%近いという話が書いてありましたが、個人的にはよく4%で済んでいるなという感じがします。もっとも株主も保護されるのであれば「4%も」ということになるのかもしれませんが・・
次に欧州で起債したユーロ建て東電債の状況について述べられていました。発行量が1100億円程度とそれほど大きくはないとしながらも、残存期間3年のドイツ国債の利回りと比較するとプレミアムが約10%(一時12%まで上昇したそうです)とのことです。
海外が過剰に反応しているだけなのか、日本国内の評価がおかしいのかといわれれば、個人的には国内の評価がおかしいように思います。とはいっても、個人的にはプレミアム10%でも東電の社債を購入しようとは思いませんが。
そして、東電の社債が減損の瀬戸際にあると続いていました。「2015年12月償還の東電債を例にとると、標準価格は74円台となっている」そうです。
「金融商品会計に関する実務指針」第91項によれば、「個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる。」とされているので、30%下落すると減損が必要となる可能性があります。
東京電力の社債の発行残高が約5兆円なので、30%下落で減損が必要になれば全体で1.5兆円の減損損失が発生するということになるということです。
なお、「金融商品会計に関する実務指針」第91項では、「売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む。第92項において同じ。)のうち時価のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(以下「減損処理」という。)しなければならない」とされていますので、満期保有目的で保有している債権(社債)であっても、時価が著しく下落すれば減損処理が必要とされます。
「回復する見込みがあると認められる場合」とは、どのような場合かを確認しておくと、債権の場合は、「単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合であっても、いずれ時価の下落が解消すると見込まれるときは、回復する可能性があるものと認められるが、格付けの著しい低下があった場合や、債券の発行会社が債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合など、信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落した場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない」とされていますので、東電の社債の場合は回復する見込みはないとなると考えられます。
3月決算の会社はもう間もなく第1四半期末をむかえますので、時価の変動に注目です。金融機関が一番影響が大きいのでしょうか・・・
日々成長。