監査時間および報酬の動向-平成27年度監査実施状況調査
2017年1月19日に日本公認会計士協会から平成27年度「監査実施状況調査」が公表されました。
金融商品取引法監査の平均報酬は個別のみの場合1,741万円(平成26年度:1,725万円)、連結ありの場合4,704万円(平成26年度:4,581万円)と連単ともに増加しています。
平均の監査時間も個別のみの場合1,581時間(平成26年度:1,519時間)、連結ありの場合4,033時間(平成26年度:3,867時間)と増加傾向にあります。
上記より1時間あたりの平均単価を計算すると、単体のみの場合11,013円(平成26年度:11,355円)、連結ありの場合11,670円(平成26年度:11,845円)となっています。時間当たりの平均単価は6年連続で減少しており、6年間で1,340円減少しているとのことです(経営財務3295号)。
上記の調査では売上高の規模区分された集計結果が示されており、当然のことながら監査報酬、監査時間共に売上高が増加するに従い大きくなっています。
特徴的なのは、補助者等のうち「その他」の時間数割合が売上規模が大きくなるほど大きくなっているという点です。例えば、単体のみの売上区分10億円以上50億円未満の場合、全体の時間数が1,387時間・「その他」の時間数が374時間(約27%)であるのに対して、売上高500億円以上の会社では全体の時間数が3,832時間・「その他」の時間数が1,808時間で約47%と大きくなっています。
連結ありの場合も傾向としては同様で、売上高区分10億円以上50億円未満の場合は、総時間数1,923時間・「その他」585時間で約30%であるのに対して、売上高1兆円以上の場合は総時間数16,717時間に対して、「その他」が7,634時間で約46%となっています。
ちなみに「補助者等」は「会計士」と「その他」に区分されていますので、「その他」は「会計士」以外の補助者の時間ということになります。
連結ありの場合の「その他」の平均時間は前年度の1,399時間から1,492時間と93時間増加しています。一方で、全体の時間数は前年度3,867時間から4,033時間と166時間増加となっており、「その他」の補助者の時間数が増加している傾向が窺えます。
「その他」の内訳が不明のためなんともいえませんが、時間当たりの単価が低下傾向にあるといっても「その他」補助者の時間数割合が増加していることを考慮すると当然なのかもしれません。
また、金商法監査における監査報酬の最低額は単体のみ売上区分10億円未満で800千円とされています。普通に考えるとありえない金額ですが、前年度は750千円が最低額(同じ会社であるかは不明)であったので、多少の増加傾向となっています。
連結ありの場合の最低報酬額は売上高10億円未満ではなく、100億円以上500億円未満で1,500千円となっています(ちなみに売上高10億円未満は2,600千円が最低)。売上規模だけではなんともいえなないとは思うものの、連結ありの売上高5000億円以上1兆円未満の最低報酬が12,000千円というのもかなりすごいなという気がします。
被監査会社の状況によって妥当な監査時間は異なるので妥当な監査時間というものは上記のような平均値を参考にするしかありませんが、被監査会社が妥当な監査時間というもに疑問を感じた場合には、監査人を変更してみるという方法しかないのかもしれません。現場レベルで考えるとあまり気はすすみませんが・・・(そんなことを言っているからいけないのかも)。