平成28年中における会計監査人の交代は144社-T&A masetr調べ
T&A master No.676に「平成28年中における会計監査人の交代企業一覧」が掲載されていました。
この記事によると同誌が調査した結果、平成28年中に会計監査人の交代を行っている会社が144社あったとのことです。このうち42社は新日本有限責任監査法人からの交代となっています。
まず、交代企業の一覧で新日本監査法人から交代した企業の交代先の監査法人を確認してみると、有限責任あずさ監査法人が13社で最も多く、PWCあらた監査法人が11社と続きます。有限責任監査法人トーマツは意外に少なく4社で、太陽有限責任監査法人が3社、海南監査法人・東陽監査法人が各2社で、その他は誠栄監査法人、監査法人A&Aパートナーズ、東邦監査法人、監査法人アヴァンティア、京都監査法人、清和監査法人、東京第一監査法人が各1社となっています。
東芝については新日本側から翌年の監査契約を締結しない旨を申し入れたとされていますが、東芝グループのほかでは、富士フイルムホールディングスやANAホールディングスなどを失った影響は大きいのではないかと思われます。
このような監査人の交代は東芝の問題に端を発していると推測されますが、会社がきちんと経理を行っていれば、どこが監査を行っていても問題ないのは同じですので、会計監査人の交代を選択した会社は監査人を代えたいという潜在的なニーズがあったのではないかという気がします。
新日本監査法人からの変更以外では、明示アーク監査法人とアーク監査法人の合併に伴う変更、明示アーク監査法人と聖橋監査法人との合併に伴う変更、清陽監査法人と九段監査法人の合併に伴う変更が件数としては多くなっています。
この他、珍しいものとしては、以前も紹介しましたが、追加の監査手続きの実施を申し入れたが十分な対応が得られない旨の意見が付されたオークファン(有限責任あずさ監査法人)がありました。ちなみに後任の監査人は監査法人アリアとなっています。
また、2015年の8月にマザーズに上場したメタップスが有限責任あずさ監査法人からPWCあらた有限責任監査法人に会計監査人を変更しています。特に会計等の問題が発覚したわけでもないのに上場後すぐに会計監査人が交代になるのは比較的めずらしいと思います。任期満了による変更とされていますが、PWCあらた有限責任監査法人を会計監査人に選任した理由については、「・・・(省略)、同法人が本年 10 月に AI 監査研究所を開設しており、業務執行社員として
予定されている公認会計士も、当社グループが注力する FinTech 及び AI(人工知能)領域、並びに海外展開において、十分な理解や経験を有し、当社グループの規模や事業内容、スピード感を勘案し、IT 等を駆使した効果的な監査が可能であると判断したためであります。」とされています。
業務執行社員として予定されている方が業界に精通しているということはあるかと思いますが、各種手続き等はPWCグループのポリシーがあると思われますので、「IT 等を駆使した効果的な監査が可能」というは期待過剰なのではないかという気はしますが、監査報酬が従来にくらべてどれくらい低く抑えられるのかを来期の有報で確認してみたいと思います。