株主総会招集通知発送前の電子的公表とWEB修正
コーポレートガバナンスコードが導入以降、株主総会の招集通知については発送前に自社のHP等で電子データを公表する会社が増加しています。
これは、補充原則1-2②において以下のように規定されていることが直接の原因ですが、印刷や発送準備にかかる日数を勘案して作業スケジュールが組まれるため、電子データは発送日の数日前にはできあがっており、できあがっている電子データを開示するコストはないに等しいということも大きな要因となっています。
1-2② 上場会社は、株主が総会議案の十分な検討期間を確保することができるよう、招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつその早期発送に努めるべきであり、また、招集通知に記載する情報は、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送するまでの間に、TDnet や自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきである。
一方で、株主総会の招集通知に修正すべき事項が生じた場合は、WEB修正を採用している会社が一般的になってきています。そしてWEB修正については、「招集通知発送後に株主総会参考書類、事業報告、計算書類および連結計算書類の記載事項について修正すべき事情が生じた場合に備えて、株主に対して修正後の事項を周知する方法を招集通知とあわせて通知することができる(施65条3項・133条6項、計161条7項・162条)」(「株主総会ハンドブック 第3版」 中村直人 編著 中央経済社)というような説明がされていることが多いようです。
コーポレートガバナンスコード導入前は、招集通知の発送前に電子データを開示するというのはそれほど一般的ではなかったと思いますので、修正を行うとすれば「招集通知発送後」であるのが通常でしたが、招集通知発送前に電子データを開示することが増加してくると、招集通知の現物を発送前に修正事項が見つかるというケースも考えられます。
このような場合、招集通知発送前であってもWEB修正は可能かが問題となります。この点を確認してみると、経済産業省が平成28年2月2日に作成した「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会 事務局提出資料 ~招集通知関連書類の電子提供~ (原則電子化に向けた検討を中心に) 資料4-1」の「1.早期(発送前)Web開示 早期Web開示後に修正が生じた場合の対応」において以下のように述べられていることが確認できました。
なお、早期Web開示後に修正が生じた場合の対応を整理すると、以下のとおり。
①法定Web修正時の取扱いに準じ、速やかに自社HPにおいて修正を行う
②TDnet公表後は、追加公表により修正を行う
上記①の詳細として以下のように記載されています。
発送前Web開示を行った後、株主発送時点までの間に誤りが発生した場合の修正対応については、発送前Web開示は法定の開示ではなく任意の開示であり、任意の開示についてどのように訂正するかということについては、特段法律において規制していないため、現状のいわゆる法定のWeb修正時の取扱いに準じ、速やかに自社ホームページにおいて修正を行う対応で問題が生ずることは考えにくいとの見解が「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」の報告書(2015年4月)において示されている。
もちろん印刷等が間に合えば、正誤表等を一緒に封入するということも考えられますが、そもそもそのようなコスト等を軽減することがWEB修正の目的であるはずですし、発送後であればWEB修正OKで発送前がNGということになれば、発送するまで修正を待とうとする誘因が働くので、結局株主のためにはならないと考えられることからも上記の見解は妥当だと思われます。