議決権行使結果の個別開示を要請-改訂版スチュワードシップ・コード
2017年5月29日に金融庁はスチュワード・シップコード(改訂版)を公表しました。
追加されている項目も結構ありますが、やはり気になる改訂部分は以下の部分です。
5-3. 機関投資家は、議決権の行使結果を、少なくとも議案の主な種類ごとに整理・集計して公表すべきである。
こうした公表は、また、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすための方針に沿って適切に議決権を行使しているか否かについての可視性をさらに高める上で重要である観点から、機関投資家は、議決権の行使結果を、個別の投資先企業及び議案ごとに公表すべきである。それぞれの機関投資家の置かれた状況により、個別の投資先企業及び議案ごとに議決権の行使結果を公表することが必ずしも適切でないと考えられる場合には、その理由を積極的に説明すべきである。
議決権の行使結果を公表する際、機関投資家が議決権行使の賛否の理由について対外的に明確に説明することも、可視性を高めることに資すると考えられる。
日本の株式にも多額の資金を投資しているノルウェー政府年金基金のHPでは、議案毎に賛否が開示されていますが、今後はこのような機関投資家が増加してくるということになりそうです。ところで、議案ごとに賛否が公表されるようになると、一般株主からの注目後もかわるのでマイナス面があるのではないかとう点については、以下のように注釈が付されています。
個別の議決権行使結果を公表した場合、賛否の結果のみに過度に関心が集まり、運用機関による形式的な議決権行使を助長するのではないかなどの懸念が指摘されている。
しかし、運用機関は、自らが運用する資産の最終受益者に向けて、活動の透明性を高めていくことが重要である。さらに、我が国においては、金融グループ系列の運用機関が多く見られるところ、こうした運用機関において、議決権行使をめぐる利益相反への適切な対応がなされていない事例が多いのではないかとの懸念を払拭するためにも、個別の議決権行使結果を公表することが重要である。
機関投資家は個別に会社にインタビューを行っていたりするため、一般株主としては主要な機関投資家がどのような議決権行使を行ったのかを知ることは意味がある情報だと思われますが、今回の改訂では利益相反への対応に関連した部分の追加も大きくなされており、原則2-2には以下の部分が新たに追加されています。
特に、運用機関は、議決権行使や対話に重要な影響を及ぼす利益相反が生じ得る局面を具体的に特定し、それぞれの利益相反を回避し、その影響を実効的に排除するなど、顧客・受益者の利益を確保するための措置について具体的な方針を策定し、これを公表すべきである。
さらに2-3では以下が追加されています。
2-3. 運用機関は、顧客・受益者の利益の確保や利益相反防止のため、例えば、独立した取締役会や、議決権行使の意思決定や監督のための第三者委員会などのガバナンス体制を整備すべきである。
以前は、利益相反に関する考え方が日本は甘いという話はよく耳にしましたが、そうだとすると結局金持ちだけが得をするということになりかねませんので、この辺はきっちりとしてもらいたいところです。現在スチュワードシップコードを受け入れている機関投資家については、11月末までに改訂内容に田尾言おう下公表項目の更新を行うことが求められていますので、議決権行使結果の開示については12月決算会社の株主総会から多くなってくるものと考えられます。