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共有持分の放棄により取得した資産を譲渡したときの譲渡所得計算時の取得費は?

業務に関係するものではありませんが、実生活において知っておくと役に立つかもということで、「Q&Aから見る譲渡所得の審理上のポイント(1)」(T&A master No.713)で取り上げられていた共有持分の放棄で取得した資産の取得費についてです。

上記の記事は、課税当局が譲渡所得の審理上の留意点として取り上げているQ&Aの中からいくつかをピックアップして紹介しているものですが、その中の一つに「共有持分の放棄により取得したした資産の取得費について」というものがありました。

このQ&AのQは以下のようになっています。

平成元年、甲及び甲の母は、A土地の持分2分の1を各々60,000,000円で取得した。
平成27年に甲の母は、A土地の持分2分の1(以下「本件放棄持分」という。)を放棄(民法第255条《持分の放棄及び共有者の死亡》)し、甲は、当該持分を無償で取得した後、平成29年に、第三者に対し、A土地を90,000,000円で譲渡した。
この場合、甲は、本件放棄持分に対応する譲渡所得の計算において、次の①又は②によることが認められるか。
① 所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項の規定により、取得価額を60,000,000円、取得時期を平成元年とすること。
② 本件放棄持分の取得時(平成27年)の時価を、取得価額とすること。

簡単に考えると、親子でみれば1億2000万円で取得した土地を9000万円で売却したので3000万円の損失が生じていることになりますが、そのような取扱いができるのだろうかという質問だといえそうです。

短い質問内容ですが、民法やら所得税の条文数が引用されているので、まず、各条文の内容を確認することとします。

民法255条(持分の放棄及び共有者の死亡)
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

上記から、共有者が自分の持分を放棄したら、その持分は他の共有者のものとなるということになります。上記のケースでいえば、甲の母が共有持分を放棄したので、その持分は甲のものとなり、甲の単独所有となるということになり、直感的にも特に違和感はありません。

次に、所得税法第60条(贈与等により取得した資産の取得費等)第1項では以下のように定められてます。

第六〇条 居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二 前条第二項の規定に該当する譲渡

上記でいうところの前条第一項に規定する資産とは、「居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産」(所得税法第59条1項本文)を意味しています。また、上記第2号でいうところの「前条第二項の規定に該当する譲渡」とは、個人に対して行われた著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡を意味しています。

これらを踏まえた上で、質問に対する回答は、「いずれも認められません。」となっています。

これは間違えるかもしれないなと思うのが、上記のようなケースは「贈与」にあたるではないかという点です。つまり、税務上は母が放棄した年度において「贈与」として課税されるはずで、「贈与」だと考えてしまうということです。多分私ならそう考えてしまいます。

まず、相続税法上、他の共有者の放棄により持分を取得した者は、当該持分を贈与により取得したものとみなされるという理解は間違っていませんでした(相続税法第9条、相基通9-12)。贈与として取り扱われるという考え方まではよかったですが、ここでのポイントは贈与とみなされて、相続税法上課税されるのであって、厳密には「贈与」ではない(法的には持分を放棄したにすぎない)ということと、これはあくまで相続税法の話で、所得税の話ではないという点です。

所得税法60条1項1号には「贈与」と規定されており、相続税法の規定によって贈与とみなされるものを含むというような定めはされていないので、所得税法の範疇では「放棄による取得」はあくまで「放棄による取得」であって「贈与」には含まれないということになるそうです。

条文上規定されていないものの解釈上含まれる余地はないのかが問題となりそうですが、この点については所得税法9条1項第16号においては「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)」と規定されており、相続税法により「みなされる」ものを含む場合にはその旨が規定されていることからすると、解釈によって「みなされる」ものが含まれるとすることはできないという考え方になるようです。

次に、所得税法60条1項第1号に該当せずとも第2号に定める定める著しく低い価額の対価による譲渡に当たるのではないかですか、放棄は無償による資産の移転だから、著しく低い価額の対価による譲渡には該当しないとのことです。質問のケースで放棄ではなく100万円でも価格をつけて譲渡としていれば結果がわかるとすると不合理な気はしますが、そういう可能性はあるので税理士さんにきちんと相談した方がよいということなのでしょう。

よって所得税法60条1項は適用はないということなります。もう一つの質問である「本件放棄持分の取得時(平成27年)の時価を、取得価額とすること」ができるかについてですが、この点については「譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、その資産の取得に要した金額等による(所法38①)ところ、甲は、母から無償で本件放棄持分を取得したのであって、当該取得時の経済的負担などを考慮すべき事情はありません(財産分与や代物弁済による取得のような事情はない)」とされています。

ということは、この質問のケースでは、母親の放棄時に贈与税が課税された上、譲渡時にも譲渡所得が生じて課税されてしまうということになるということになりそうです。居住用財産の譲渡損失として給与所得などの所得と損益通算できる可能性があったものが、さらに課税されてしまうという結果になってしまうとなると、法人や富裕層でなくてもタックスプランニングは重要だということを改めて認識しました。

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