ICOの会計処理事例
適時開示されていたリリースをみて、そういうものなのかなと思った事例が経営財務3344号のニュースで取り上げられていたので紹介します。
これは、東証マザーズに上場している株式会社メタップスが1月15日(翌16日に一部訂正)に「当社連結子会社の ICO に伴う会計処理について」という適時開示において、ICOの会計処理を開示したことによるものです。
頭が固いためか、個人的にはICOで資金が集まるという事実が釈然としないというのが正直なところですが、会計処理についても日本基準では仮想通貨の会計処理等の当面の取り扱いの公開草案が公表されているところで、ICOには追いついていない状況にあります。
メタップスはIFRSを適用していますが、経営財務の記事によれば「ICOの会計処理についてはいずれの会計基準でも定められていない」とされています。
このような中、メタップスは同社の韓国子会社におけるICOに関連し、2018年8月期第1四半期における会計処理を以下のように行う方針である旨の開示を行いました。
本ICO は、仮想通貨 Pluscoin(PLC)の販売であり、本 ICO において受領した対価は将来的には収益として認識いたします。但し、収益認識の方法やタイミングについては引き続き協議中ですが、本四半期においては、受領した対価の全額を負債(前受金)として計上するのが妥当であると判断しております。
本ICO において受領したイーサリアム(ETH)をはじめ、保有する仮想通貨については、四半期末時点の公正価値評価を行わず、取得原価をもって無形資産または棚卸資産(“CoinRoom”の保有分)として計上します。当該無形資産は、売却時に簿価との差額を損益計上いたします。また、当該棚卸資産は、売却時に売却価額を売上高、帳簿価額を売上原価に計上いたします。仮に仮想通貨の処分見込価額が取得原価を相当程度下回った場合は該当会計期間において差額を費用として認識いたします。
自社保有分の PLC については、帳簿価格 0 円として無形資産または棚卸資産として計上いたします。
この会計処理については、監査法人と協議中として、同社は第1四半期報告書の提出期限の延長(2018年2月15日まで)を申請し、承認されていますが、現時点ではまだ決着がついていないようです。
同社は上場後すぐに「FinTech 及び AI(人工知能)領域、並びに海外展開において、十分な理解や経験を有し、当社グループの規模や事業内容、スピード感を勘案し、IT 等を駆使した効果的な監査が可能であると判断し」たとして、会計監査人をあずさからPwcあたらに変更しているという経緯がありますが、Pwcあらたも上記のような会計処理をすんなりOKという訳にはいかなかったようです。
保有している仮想通貨を時価評価するしないはともかくとして、従来の感覚からすると一番違和感を感じるのは、ICOで受領した対価が収益として認識されるという点ではないかと思います。
ICOについては本日、米証券取引委員会(SEC)が米テキサス州を拠点とするアライズバンクのICOを差し止めたというニュースが報道されていました。といってもこのケースでは既に約6億ドルを調達済みで、アライズバンクの保有する資産を凍結し保全するためのものであるようです。
為替レートが20%とか30%変動したら大騒ぎとなるなかで、それとは比べものにならない位、価格変動が激しい仮想通貨を企業が主な決済手段として使用するのは厳しいと思いますので、しばらくは投機目的での取引がメインとなるのではないかと考えられます。
ハッキングされて何百億という仮想通貨が行方不明になったり、3日で50%になったりしながら、ブラッシュアップされて、広く安心して使えるものになるのでしょうか・・・