エフオーアイの粉飾-主幹事証券に責任認めず(東京高裁)
「エフオーアイ」、そういえばそんな粉飾事件あったよねという感じになりつつありますが、エフオーアイ株式会社は平成21年11月に上場し、わずか7ヶ月で上場廃止となった会社です。
エフオーアイは、上場時の売上高が本当は2億円程度に過ぎなかったものを118億円と粉飾し上場を成し遂げ、52億円程度を調達し、上場廃止までの最短記録を更新し上場廃止になったという事件です。
主幹事証券は、みずほインベスターズ証券でしたが、元株主らが主幹事証券に対して損害賠償を求め争われた結果、平成28年12月に東京地裁は、主幹事証券の責任を認め、約3000万円の損害賠償を命じていました。
これに対して、みずほインベスターズは控訴し、東京地裁の判決が平成30年3月23日に下されました。
結論としては、主幹事証券会社に対する請求は棄却されました。
この事件では、会社が粉飾を行っているという匿名投書があったとされ、それに伴い主幹事証券は追加で調査を実施しましたが、地裁判決ではその調査が不十分と判断されていました。
これに対して、高裁は以下のように判断したとのことです。
原告らは主幹事証券会社の追加調査は不十分であると主張するが、監査結果の信頼性に疑義を生じさせるような事情が判明した場合、主幹事証券会社は自ら財務情報の正確性について公認会計士等と同様に実証的な方法で調査する義務はなく、一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意を用いて監査結果に関する信頼性についての疑義が払拭されたと合理的に判断できるか否かを確認するために必要な追加調査を実施すれば足りるとした。(T&A master No.742「エフオーアイの粉飾決算事件、主幹事証券会社の責任を認めず」)
上記のT&A masterの記事によれば、匿名投書の指摘事項等に対して主幹事証券が実家下主な追加調査については以下のとおりとされています。
①会計監査人の監査体制及び適正等
監査事務所の監査実績について調査し、過去に所属の公認会計士が日本公認会計士協会による処分を受けたことがないことを確認。
②注文書、検収書等の偽造による粉飾決算の指摘
売上げについては発注書及び通関書類を確認するなど、各監査の方法について確認。
③製造・出荷した装置を倉庫に運び入れているとの指摘
会計監査人と面談し、棚卸時に実際に外部倉庫に出向き、在庫の確認を行っているとの報告を受けた。
④取締役が関与しているとの指摘
ヒアリングを実施
あまりにもひどい粉飾だったので、そんなことにも気づかなかったのかという投資家の心情はよく分かりますが、主幹事証券会社は監査人ではないので、監査人と同様の実証的な方法で調査を求めないというのは妥当な結論ではないかと思います。
最近では、余力がないといって大手がIPO準備の監査をなかなか受けてくれないという状況にある一方で、一定規模以上の監査法人でないと証券会社が難色を示すということがあるようです。ここで主幹事証券の責任が否定されたことにより、その流れが多少変化することが望まれます。