消費税還付スキームの否認-非公表裁決例を確認
税務通信3519号の「裁判例・裁決例」に「非公表裁決 契約日ベースの課税仕入れを認めず」という記事が掲載されていました。
これは、不動産等を利用した消費税の還付スキームで税務当局に否認され、裁決で棄却された複数ある非公表裁決の一つとのことです(平成29年3月15日(東裁(法・諸)平28第101号)。
この事案では、「請求人である株式会社が関係会社の所有する不動産を取得しており、その売買契約の締結日を課税仕入れの計上時期として、不動産の賃料収入を翌期の建物引渡し以後に受け取る契約にしていた」とされています。
そもそも資産等の譲渡の時期はいつになるのかですが、消費税法基本通達9-1-13では以下のように述べられています。
(固定資産の譲渡の時期)
9-1-13 固定資産の譲渡の時期は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは、これを認める。
上記より基本的には、消費税法上は固定資産の引渡しがあった日が譲渡の時期となりますが、契約で効力発生日を別に定めているのであればそれも認めるということになっています。普通に契約というものを考えると、固定資産の引渡しがあった日よりも、契約の効力発生日を優先的に考えてしまうのではないかと思いますが、消費税の世界ではこれが逆転しているというのが特徴といえるのかもしれません。
この事案では、まず、3月中に3月決算会社として会社を新規に設立し、同年4月から翌年3月までの適用開始課税期間とする消費税課税事業者選択届を提出したとされています。その後6月に自販機設置契約を締結し、9月に関係会社との間で建物等の売買契約を締結しました。さらに、3月決算を10月決算に決算期変更し、11月から翌年10月までを適用開始課税機関とする消費税課税事業者選択不適用届出書を提出し、12月に建物の引き渡しと登記を完了したとのことです(前述の通り不動産賃料収入は引き渡し後(12月)以降に受け取る契約となっていた)。
上記のような経緯に対する審判所の判断は以下の通りと述べられています。
自動販売機設置契約に係る販売手数料の収入計上のみで非課税売上が計上されない機関で事業年度を変更することにより、本件課税期間における課税売上割合を100%にしている。そして、売買契約による本件建物等の引渡しを受けていないにもかかわらず、本件建物等の譲受けに係る各取引の経理処理をあえて行って本件通達ただし書を適用している。これは、本件建物等の売買代金に係る消費税等の額の全部の還付を受けるためだけに行ったものと認められる。
そして「租税負担の公平を著しく害する特段の事情がある場合に当たるというべき」として、本件建物等の引渡しは12月であることは明らか判断したとのことです。
これだけ話題となっていれば、今から自販機スキームにチャレンジすることもないとは思いますが、上手すぎる話は「租税負担の公平を著しく害する」かもしれないという認識はもっておいたほうがよいと思われます。とはいえ、保守的になりすぎても仕方ありませんが・・・