株主総会資料の電子提供は総会開催日の3週間前からとなる見込み
T&A master No.765に「株主総会資料の電子提供、株主総会の3週間前の日から」という記事が掲載されていました。
この記事によると、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会において、株主総会資料の電子提供制度の概要が固まったとのことです。
「株式会社は取締役が株主総会を招集するときは、株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類及び事業報告、連結計算書類の交付又は提供に代えて、株主がインターネットにより提供を受けることができる旨を定めることができるようにする」とされ、振替株式(社債、株式等の振替に関する法律第128条1項に規定する振替株式)を発行している株式会社は、改正会社法の施行日を効力発生日とする定款変更の定めを設ける定款変更の決議をしたものとみなされるとされています。
中間試案で述べられていた内容から特に変更はないようですが、「電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるときは、その定めを登記しなければならない」とのことです。定款変更については決議があったものとみなされるので、特に手続きは不要なようですが、登記については変更登記が必要になるということだと考えられます。
また、「株主がインターネットにより提供を受けることができる旨を定めることができる」と任意規定のようですが、振替株式の発行会社では定款変更決議があったものとみなされるので、実質的には義務という位置づけになるものと考えられます。
電子提供の開始日については、中間試案では「株主総会の日の4週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日」と「株主総会の日の3週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日」の2案が示されていましたが、電子提供対象書類の中には会計監査が必要なものがあるため4週間前だと対応不可となるという意見があったため総会の日の3週間前の日となったとのことです。
このほか「定時株主総会に係る事項が記載された有価証券報告書の提出の手続きについてEDINETを使用して行う場合には、当該事項について電子提供措置をとることを要しないものとする特例」が設けられるとのことですが、総会前に有価証券報告書を提出する場合に利用可能ということになると考えられますので、実際に利用されるケースは少ないのではないかと思われます。
次に、中間試案では株主総会の招集通知の発送期限についても、総会開催日の2週間前、3週間前、4週間前の3案が示されていましたが、招集通知の発送期限については現行どおり総会開催日の2週間前とされているとのことです。
最後に、インターネットを利用することができない株主に対しては、書面交付請求権が認められ、請求を受けた場合には、会社は総会開催日の2週間前までに電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならないとのことです。
「ただし、書面交付請求をした株主がいる場合において、その書面交付請求の日から1年を経過したときは、株式会社は当該株主に対し書面交付を終了する旨を通知、かつ、これに異議のある場合には、一定期間内に異議を述べる旨を催告することができる」とされるとのことです。都度請求が必要なのかと思っていましたが、この書きぶりからすると、一度書面請求したら、会社は上記の手続きを取らない限り紙ベースでの提供が必要となるということなのではないかと考えられます。
インターネットを利用することができない高齢者等がいることを想定して書面交付請求が認められることになるようですが、単に紙ベースで欲しいという株主もいるはずななので、書面請求がゼロになることはないと思いますが、印刷部数や発送費用は削減できそうです。