業績連動給与の要件緩和と厳格化
平成31年度税制改正によって業績連動給与の要件の見直しが行われるとのことです(T&A master No.768「報酬委員会の過半独立役員損金算入可」)
まず、緩和方向の改正としては、報酬委員会(任意の報酬委員会を含む)のメンバー全員が「非業務執行役員」であることを求める損金算入要件が削除されるとのことです。
現行法において、業績連動給与を損金算入するために監査役会設置会社または監査等委員会設置会社で任意の報酬委員会を設置することは必ずしも必要ではないため、これだけだと緩和と認識されない可能性がありますが、以下のような損金算入要件の厳格化も図られるとのことです。
厳格化されるのは、現行法において、「報酬委員会等の決定がなくても、監査役の過半数が業績連動報酬の算定方法を適正と認める(法令69条⑮四)、あるいは監査等委員の過半数が業績連動報酬に係る取締役会決議に賛成していれば(同五)、当該業績連動報酬を損金算入することができるが、今後は報酬委員会等の決定がなければ損金算入が認められなくなる」というものです。
よって、会社法において報酬委員会設置が義務付けられている指名委員会等設置会社はごく少数であるため、税制改正後に業績連動給与を損金算入するためには任意の報酬委員会を設置することが必要ということになるようです。
2018年6月に改訂されたコーポレートガバナンスコードでも、補充原則4-10①が以下のように改訂されており、Comply or Explainという建前であるものの、任意の報酬委員会を設置していないため業績連動給与が損金算入できないということになれば株主から厳しく追及される可能性もあり、税務上の損金算入要件を満たすためComplyとするしかないという状況に追い込まれることになりそうです。
<改正前:一部抜粋>
経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより・・・
<改正後:一部抜粋>
経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、
以上の他、以下の三つの損金算入要件が新たに設けられるとのことです。
- 業務執行役員が自己の業績連動給与の決定等に係る決議に参加していないこと
- 報酬委員会等の委員の過半数が「独立社外役員」であること
- 委員である独立社外役員の全てが業績連動給与の決定に賛成していること
なお、”上記の改正は原則として「平成31年4月1日以後に支給に可係る決議をする給与」から適用されるとされるが、1年間の適用猶予期間も設けられている“とされています。