企業内容等開示府令の改正を確認(その2)
前回の続きで、1月31日に公布された企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令の内容についてです。前回は、T&A master No.774とNo.775の「金融庁の考え方から読む企業内容等開示府令(上)、(下)」でQ&A形式で解説されていた実務上の留意点のうち(上)の内容で終了したので、今回は残りの部分の主なものを確認していきます。
4.役員の報酬等について
最近某自動車会社の問題で注目を浴びている役員報酬ですが、おそらくそれとはあまり関係なく、それ以前から”「攻めの経営」を促す役員報酬”などと役員報酬の在り方が注目されていたことなどを受けての改正だと思われます。第二号様式記載上の注意(57)が以下の様に改正されました(ちなみに改正前の(57)は「監査報酬の内容等」)。
(57) 役員の報酬等
提出会社が上場会社等である場合には、提出会社の役員(取締役、監査役及び執行役をいい、最近事業年度の末日までに退任した者を含む。以下(57)において同じ。)の報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く。)をいう。以下(57)において同じ。)について、次のとおり記載すること。
a 届出書提出日現在における提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の内容及び決定方法を記載すること。なお、当該方針を定めていない場合には、その旨を記載すること。
提出会社の役員の報酬等に、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の提出会社又は当該提出会社の関係会社の業績を示す指標を基礎として算定される報酬等(以下(57)において「業績連動報酬」という。)が含まれる場合において、業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定に関する方針を定めているときは、当該方針の内容を記載すること。また、当該業績連動報酬に係る指標、当該指標を選択した理由及び当該業績連動報酬の額の決定方法を記載すること。
提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する役職ごとの方針を定めている場合には、当該方針の内容を記載すること。
提出会社が指名委員会等設置会社以外の会社である場合において、役員の報酬等に関する株主総会の決議があるときは、当該株主総会の決議年月日及び当該決議の内容(当該決議が二以上の役員についての定めである場合には、当該定めに係る役員の員数を含む。)を記載すること。この場合において、当該株主総会の決議がないときは、提出会社の役員の報酬等について定款に定めている事項の内容を記載すること。
b 取締役(監査等委員及び社外取締役を除く。)、監査等委員(社外取締役を除く。)、監査役(社外監査役を除く。)、執行役及び社外役員の区分(以下bにおいて「役員区分」という。)ごとに、報酬等の総額、報酬等の種類別(例えば、固定報酬、業績連動報酬及び退職慰労金等の区分をいう。以下bにおいて同じ。)の総額及び対象となる役員の員数を記載すること。
提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、提出会社の役員としての報酬等(主要な連結子会社の役員としての報酬等がある場合には、当該報酬等を含む。以下bにおいて「連結報酬等」という。)の総額及び連結報酬等の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載すること(ただし、連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。)。
使用人兼務役員の使用人給与のうち重要なものがある場合には、その総額、対象となる役員の員数及びその内容を記載すること。
提出会社の役員の報酬等に業績連動報酬が含まれる場合には、最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標及び実績について記載すること。
c 提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲を記載すること。提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定に関与する委員会(提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するものをいう。以下cにおいて「委員会等」という。)が存在する場合には、その手続の概要を記載すること。また、最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における、提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)及び委員会等の活動内容を記載すること。
色々と記載しなければならないことが記載されていますが、役員の報酬等に関する株主総会の決議については、公開草案のコメントを踏まえ、「当該決議が二以上の役員についての定めである場合には、当該定めに係る役員の員数」を記載することされています。
金額が確定していない報酬については、”開示府令において記載すべき報酬等とは、「報酬、賞与その他の職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込の額が明らかになったもの」とされている。なお、金額が確定していない役員の報酬等については、報酬プログラムの開示において記載する“とのことです。
業績連動報酬について、「提出会社の役員の報酬等に業績連動報酬が含まれる場合には、最近事業年度における当該業績連動報酬に係る指標の目標及び実績について記載すること。」とされていますが、目標がない場合は、”その旨及びその理由を適切に説明する必要がある”とのことです。一方で目標はあっても実績が未定の場合は、報酬額が確定する時点で実績を記載することが考えられるとされています。
「役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲」の記載が求められていますが、取締役会決議によって取締役の報酬を代表取締役に再一任している場合にどう記載すべきかについては、「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の趣旨を踏まえると、取締役会の決議によって決定の全部又は一部を取締役に再一任している場合には、その旨を記載すべきと考えられる」と述べられています。
また、報酬決定に関与する委員会等がある場合に、構成員の指名なども記載する必要があるかについては、”委員会等が存在する場合には「コーポレート・ガバナンスの概要」において、構成員の氏名(当該機関の長については役職名)の記載が求められている”とされています。
5.株式の保有状況について
株式の保有目的である「純投資目的」の定義は何かについては、”「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合のことと考えられる”とのことです。
純投資目的以外の目的である投資株式しか保有していない場合には、純投資目的とそれ以外を区分する基準や考え方を記載することになるとのことです。
記載上の注意(58)bで「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式について、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容を記載すること」とされている点に関して、個別銘柄毎の検証内容を記載する必要があるかについては、”必ずしも個別銘柄毎に保有の適否を含む検証の結果を開示することを求める者ではないが”、”一般的・抽象的な記載を求めているものではない”とされています。なお、非上場株式については記載を省略することが可能とされています。
政策保有株式の記載について、30銘柄から60銘柄に記載数が増加しますが、適用初年度は前事業年度分も60銘柄記載する必要があるとされています。
6.主要な経営指標等について
平成31年3月31日に終了する事業年度の有価証券報告書から「最近5年間の株主総利回り」(各事業年度の配当額を事業年度末の株価で割ったもの)の記載が求められていますが、平成27年3月期以降の株主総利回りを記載する必要があるとされています。なお、配当額は、”一般的に「主要な経営指標等」に記載した「1株当たり配当額」に記載する金額を用いて計算するものと考えられる”とのことです。
色々と記載すべき事項が増えますので、注意が必要です。