2020年IPOは93社-監査法人別の社数の傾向に変動あり
明日以降年末までにあと7社のIPOが予定されている状況ですが、何事もなくすすめば2020年のIPO社数は93社となりそうです。
IPOの上場承認取り下げが相次いだ3月~4月の状況、およびその後の新型コロナウイルス感染拡大の状況からすると、終わってみれば2019年の83社を大きく上回る結果となるのは想像していませんでしたが、金利なき世界で、運用先を探している豊富な資金により11月には日経平均が29年ぶりに終値が2万6千円を超えるなど、株価という面ではよい状態にあるといえますので、むしろ今のうちIPOで資金を調達しておこうという会社が多かったということかもしれません。
まず、市場別のIPO社数を集計すると以下のようになっています。
マザーズ:63社
JQスタンダード:15社
第二部:9社
第一部:6社
マザーズの社数が圧倒的に多いというのは近年の傾向どおりですが、2019年と比較すると、JQスタンダードが昨年6社に対して15社と9社増加していることと、第一部に直接上場した会社が昨年は1社であったところ、2020年は6社と5社増加しているという部分が主な増加要因となっています。
そういった意味では、2020年は2019年と比べると大型の上場が多かったといえそうです。もっとも、雪国まいたけやローランドの再上場も含まれての増加となっています。
監査法人別にみると、従来とは少し異なった傾向がでてきていました。
EY新日本:27社
あずさ:22社
トーマツ:11社
と大手3監査法人が多いというのは従来通りの傾向でありますが、トーマツの社数が新日本、あずさの半分以下となっており、たまたまなのかもしれませんが、ここまで社数に差がつくのはトーマツが意識的にIPOの監査を絞った結果ではないかと推測されます。
大手3法人で60社ですので、残り33社はそれ以外の監査法人が監査を担当しています。
今年2社以上の実績がある監査法人を多い順にあげると、以下のようになっています。
太陽:11社
仰星:5社
三優:4社
PwCあらた3社
ひびき:2社
IPOの監査が準大手に流れている傾向が伺えます。また、実績が1社の監査法人には以下の監査法人がありました。
A&Aパートナーズ、PwC京都、アヴァンティア、海南、双葉、東海会計社、東陽、應和
実績が1社のみとはいえ、IPOの会社を担当する監査法人として従来であれば見かけることがなかった監査法人も出てきている印象です。大手がIPOの監査をあまり受けなくなったと巷ではよく耳にしましたが、今年はそれが結果して目に見える形ででてきたといえそうです。
なお、IFRSでIPOしたのは3社となっています。
この他、特徴的なのは12月28日に上場予定のクリングルファーマ(株)で、同社は直前々期、直前期ともに売上0での上場が予定されています。ある意味、これこそマザーズといえるような上場といえ、どのような株価の推移となるのか注目です。
また、赤字で上場した会社の中で最も赤字の金額が大きい状態で上場したのは12月22日に上場したウェルスナビで直前期の赤字が約20億円(売上15.5億円)でした。同社の時価総額は直近で1000億円を突破しており、市場の期待はかなり高い企業となっています。「ノーベル賞受賞者が提唱する理論に基づくアルゴリズムを利用した、全自動のおまかせ資産運用サービス」というとなんだかすごそうですが、ロングタームキャピタルマネジメントの例もありますので、市場全体が下落局面に入ったときにどのようなパフォーマンスがだせるのかが長期的な評価につながってくるのではないかと個人的には考えています。