改正会社法施行日前に取締役の報酬等の決定方針を決議する必要があるそうです
令和元年改正会社法の一部が2021年3月1日に施行される予定となっています。
その中の一つに、上場会社等の取締役会は、定款または株主総会の決議により取締役の個人別の報酬等の内容が具体的に定められていない場合には、取締役の報酬等の決定方針を決定しなければならないというものがあります(改正会社法361条7項)。
これは、改正会社法においては、社外取締役を置かなければならないとされており(改正会社法327条の2、331条6項)、取締役会に社外取締役が参加し、取締役会により取締役の職務の執行の監督を行うことがとりわけ期待されているところ、取締役の報酬等の内容の決定手続においても、社外取締役の関与を強めることが必要であるため、取締役会において取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を決定しなければならないとされたものです。
具体的に決議しなければならない事項については、会社法施行規則に委任されており、改正会社法施行規則98条の5各号で以下の事項を決定しなければならないとされています。
①取締役(監査等委員を除く)の個人別の報酬等のうち、次の事項の決定に関する方針
(ア)確定額報酬等((イ)(ウ)以外の報酬)の額または算定方法(1号)
(イ)業績連動報酬等について業績指標の内容、額または数の算定方法(2号)
(ウ)非金銭報酬等(株式報酬・ストック・オプション)の内容、「額もしくは数」または「算定方法」(4号)
(エ)(ア)(イ)(ウ)の割合(構成比率)(4号)
②報酬等を与える時期・条件の決定に関する方針(5号)
③報酬等の内容の決定について取締役その他の第三者への委任に関する事項(6号)
(ア)委任を受ける者の氏名または当該会社での地位・担当
(イ)委任する権限の内容
(ウ)権限の適切な行使のための措置がある場合はその内容
④報酬乙の内容の決定方法(③の事項を除く)(7号)
⑤その他個人別報酬等の内容の決定に関する重要な事項(8号)
(出典:「改正会社法施行規則に基づく実務上の留意点」三菱UFJ信託銀行)
決定しなければならない事項については、2020年11月27日に公布された改正会社法施行規則98条の5の項目のとおりなのですが、これらについては、「施行日(2021年3月1日)までに行わなくてはならないと解される」とのことです。
なお、改正会社法では、上記の方針を定めることが求められているので、「方針がないということは認められないと解される」とのことです。
対象は上場会社等ですので、上記のような事項については概ね方針があることが多いとは思いますが、仮に足りない事項がある場合には3月1日までに取締役会で方針を決議しておく必要があるということになります。
なお、報酬の種対別開示、報酬等の決定方針の内容の概要等(改正会社法施行規則121条4号、5号、5号の2~6号の3)や株式報酬に関する記載(役員区分ごと)(同122条1項2号)については、事業報告への記載も必要とされていますが、これが適用されるのは2021年3月決算会社の事業報告からとされています。したがって、施行日までに総会が完了していないと考えられる12月~2月決算の上場会社等については、方針自体は3月1日までに決定しておく必要がありますが、今回は事業報告への記載は求められないということになります。
ただし、報酬議案を株主総会に上程する場合には、確定報酬等にかかる議案であっても「相当とする理由」を株主総会で説明しなければならないとされており(改正会社法361条4項)、株主総会参考書類に記載する「提案の理由」に含めて「相当とする理由」を記載しなければならないとされている(改正会社法施行規則73条1項2号)点には注意が必要です。
株主総会に向けてきちんと準備しましょう。