人脈を広げるという目的で一人飲み代金を交際費処理して重加算
T&A master No.872に「”一人飲み”重加算税事案、控訴も棄却」という記事が掲載されていました。
この事案では、A氏が代表であるか、実質的な経営者として経営する会社(3社)において、A氏が複数の接待飲食店を利用した際の代金を、当該会社の業務のための交際費として税務申告したところ、その後の税務調査で、A氏の個人的な飲食代金が含まれているのではないかとの指摘を受け、A氏への貸付金とする旨の修正申告を行ったとのことです。その後、所轄税務署長は、取引先を接待した事実がないにもかかわらず、これを交際費として記帳していたことなどが「隠蔽・仮装」に当たるとして、重加算税の賦課決定を行い、これに対して会社は重加算税賦課決定の取消し等及び国賠法による損害賠償を求めて提訴したとのことです。
東京地裁は2020年3月に「Aがひいきにしていたホステスの所属する店での一人のみ」と認定して、原告の請求を棄却していました。
これに対して、以下の様な主張で控訴したとのことです。
・本件支出額は取引先等の接待のために要した交際費である。
・本件各クラブでの支出には、人脈を広げるという意味がある。
・課税超に8割否認という絶対的な方針があり、それに合わせて税理士がドラフトを作成し、税務署職員が反面調査を実施した
・Aの調書は任意性を欠くものとして、その信用性も当然に人されるべきである
最初の「本件支出額は取引先等の接待のために要した交際費である」というのは、いたって普通の主張ですが、それが疑わしいから問題となっているわけで、一人飲みと認定されるくらいですから、とりあえず主張してみたという感じでしょうか。
面白いのは二つ目で、「人脈を広げるという意味がある」という主張です。これが認められるのであれば、メンバーになっているゴルフ場でラウンドする費用や、旅行のツアーに参加するような場合もあてはまりそうです。
控訴が棄却されていることからも明らかなように、上記の主張は認められなかったわけですが、東京高裁は、「控訴人らは、Aが様々な者と交流することには人脈を広げるという意味があるなどと主張するが、単に人脈を広げるという抽象的な必要性では事業関係者に対する接待等に要した交際費とは認められない上、同人の陳述書には接待の相手方及び業務との関連性について具体的な説明はなく、的確な裏付けもない」としたとのことです。
そもそもいくら位の規模の話なのかについては触れられていませんが、争うくらいですからそれなりの規模だったものと推測されます。