2021年2月期の小売業・サービス業のコロナ影響収束見込
経営財務3504号に2021年2月期の小売業・サービス業の決算短信におけるコロナの影響期間・収束時期等の記載をまとめた記事が掲載されていました。
新型コロナウイルス感染症の影響については、収束時期等の見積りには色々あってよいという見解がASBJから示されていますが、上記の記事によると、2月期の決算短信のうち追加情報に家庭を記載している企業は54社あったとされ、仮定の内容には以下の特徴があったとのことです。なお、以下については、「いずれも明記されている事例のみ集計」したとされています。
・2022年2月期(第1四半期、2021年上半期、2022年2月期末などを含む)にわたって影響が続くと記載した企業は25社
・2022年2月期に一定程度まで業績が回復すると記載したのは15社、2023年2月期以降としたのは5社
・収束時期について記載するケースは少ないが、「見通しが不透明」、「予測は極めて困難」などのほか、2023年2月期に収束すると仮定を置いた事例もあった
上記に関連していくつか事例が紹介されていましたが、その中でひとつに以下のエスエルディー(JQ、小売業)の事例がありました。
(追加情報)
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、政府及び各自治体から店舗の営業時間短縮の要請がなされる等、先行きは依然として不透明な状況が続いております。一方で、当該感染症に係るワクチンの接種体制および流通体制の構築準備が早急に進められている等の状況にあります。これらの入手可能な情報に基づき、当該感染症による既存店売上高は、翌事業年度の期央にかけて当該感染症の感染拡大前の概ね8割程度まで回復すると仮定を変更した上で固定資産の減損等の会計上の見積りを行っております。
なお、当該感染症の感染拡大の状況や経済環境への影響等が上記仮定と乖離する場合には、当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
上記の事例では、「翌事業年度の期央にかけて当該感染症の感染拡大前の概ね8割程度まで回復する」という仮定が置かれていることが明らかにされています。色々な見方が許容されるとはいえ、何らかの理屈はあるはずですので、新型コロナウイルス感染が拡大していた昨年の状況を踏まえて、期央には8割くらいまで回復するというような前提を置いたのではないかと推測されますが、回復すると見込む割合を示しているのはよいと思います。
新型コロナウイルス感染の影響といった意味では、2月期の決算短信が公表された時期よりも影響が大きくなっているように感じられますので、上記のように回復時期、割合を明確に示している場合に、法定開示書類を作成するにあたり、直近の状況を踏まえて上記のような記載がなお妥当なのかという問題はつきまとう可能性はありますが、財務諸表の利用者からすれば、会社がどのように見ているのかを判断出来るので有用な開示だと思います。
これから3月期の決算短信公表が本格化しますが、どの程度の開示が行われるのか注目です。