電子取引制度、保存要件未充足で青色申告取消になる?
税務通信3662号の税務の動向に「電子取引制度 青色取消と必要経費計上の取扱い等を取材」という記事が掲載されていました。
2022年1月から開始となる改正電子取引制度では、電子取引データは電子取引データのまま保存することが必要となります。単に保存するだけならまだしも、一定の検索要件を満たすようにしなければならないということで、効率化のために電子データで請求書等を受領するようにしたというのが裏目に出てしまうというケースもあるのではないかと思います。
真っ先に考えられるのは、これらに対応するシステム(ソフト)を導入するということですが、JIIMA認証を取得しているソフトの価格をざっくり確認してみたところ決して安いものではありません。特に導入にあたって、何をどのように残すのかについてコンサルも受けようとすると、1,000万円以上かかりそうというものも多いようです。
”電子取引制度-Excel台帳でも検索要件を満たせるようです”で記載したとおり、高額なシステムを導入しなくても対応は可能となるようではありますが、件数によってはExcel等で検索可能性を担保しようとすると結構な手間がかかるのではないかと思われます。
とはいえ、紙出力で保存という代替案は使用不可となり、上記の記事よると、「紙出力保存廃止に伴う激変緩和措置等は設けられない方向」ということです。国自体が、電子取引等への移行を推進しようとしているようですので、おそらく緩和措置などは設けられないというのは変わらないと思われます。
そうすると、当然といってはいけないのでしょうが、電子取引制度の対象となるデータの保存要件を満たしていない状態で保管しているというケースが頻発すると予想されます(2022年1月の段階では、かなりの中小企業でそのような状態であっても個人的には全く不思議ではありません)。
この場合、会社等はどのような不利益を被るのかですが、まず青色申告が取り消される原因となる可能性はあるようです。ただし、保存要件を満たしていないことのみをもって青色申告が取り消されるという可能性は高くなさそうで、上記の記事では「真に青色申告書を提出するのにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上で行うことになるという」とされています。
もちろん2022年1月以降、きちんと対応できるようにするのがベストですが、仮に対応が遅れたとしても、対応をすすめるようにするという姿勢は必要だと思われます。
また、「電子取引データを要件に従って保存していない場合やその電子データを出力した書面を保存している場合、その要件に従って保存されていない電子データや出力書面については、他者から受領した電子データと同一性が担保されないことから、申告内容を確認するための直接の証拠書類(所得税法及び法人税法上の保存書類)として扱わない」とのことです。
この場合、「そのことのみをもって、直ちにその電子データに係る必要経費等(損金)の計上が否認される訳ではないものの、その必要経費等の支払については別途の方法で確認を要する必要があることから、保存義務者において追加的な説明や資料提出が必要となる」とのことです。
税務調査等で余計な手間が増えるのはつらいですが、ワークフローシステムや稟議などで根拠資料がまとまっているというケースであれば、もともと調査の際に提出していたりするので、実質的な手間はほとんどかわらない可能性もあります。
いずれにせよ、どのように対応するのかという方針を早々に決定し、準備にとりかかる必要がありそうです。