監査法人ハイビスカスに対する行政処分等を勧告
2022年6月3日に公認会計士・監査審査会は金融庁長官に行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました。同日付で公表されている「監査法人ハイビスカスに対する検査結果に基づく勧告について」では、以下のような点を挙げ、「当該監査法人の運用は、著しく不当なものと認められる」とされています。
1.業務管理体制
・統括代表社員は、職業的専門家としての誠実性・信用保持の重要性に対する認識が不足している
・当監査法人の社員・職員においては、不適切な検査対応に関与
・統括代表社員及び品質管理担当責任者においては、適切な監査品質を確保するための実効的かつ組織的な業務管理態勢・品質管理態勢が構築できていない
・業務執行社員を含む監査実施者において、現行の品質管理の基準や監査の基準が求める水準の理解が不足する者が存在することを認識できていない
2.品質管理体制
・当監査法人は、検査実施通知日以降、検査官に品質管理関連資料及び検証対象個別監査業務に係る監査ファイル(以下「検査対象資料」という。)を提出する日までの間、一部の社員及び職員が、事後的に検査対象資料を作成し、あるいは、事後的に作成した監査調書を監査ファイルに差し込むなどした上で、その旨を秘して検査官に当該検査対象資料を提出した。
・統括代表社員及び品質管理担当責任者は、監査ファイルの最終的な整理後における監査調書の差替えなど、当監査法人の方針及び手続に従わない監査調書の変更を防止するための具体的な措置を講じていない。
3.個別監査業務
・業務執行社員及び監査補助者は、監査の基準や、現行の監査の基準が求める手続の水準の理解が不足している。特に、収益認識に関する不正リスクの評価及び対応に係る手続についての理解が不足している。
・職業的懐疑心が不足している。
・業務執行社員及び監査補助者は、監査手続の効率性を意識するあまり、リスク評価及びリスク対応に係る手続について、慎重に検討する意識が希薄
上記の他、最後に個別監査業務の不備として、これでもかというくらい多数の項目が掲げられています。
不正リスクの評価が不適切並びに仕訳テストの検討、繰延税金資産の回収可能性の検討、事業構造改善引当金の検討、将来計画の見積りの検討、取得原価の再配分の検討、資産除去債務の検討、セグメント情報に関する注記の検討、内部監査人の利用に係る検討、内部統制監査の評価範囲の検討及び監査上の主要な検討事項の記載に係る検討が不十分、さらに、売上高の分析的実証手続、売上原価の実証手続、売掛金の実証手続、棚卸資産の実証手続、特定項目抽出による試査による実証手続、監査サンプリング及びグループ監査に係る監査手続が不十分、くわえて、子会社株式の評価、のれんの評価、構成単位の固定資産の減損、決算・財務報告プロセスの検証、取締役会等の議事録の閲覧、監査役等とのコミュニケーション、個人情報の取扱い及び独立性の確認が不十分であるなど、広範かつ多数の不備が認められる。
ありがちな見積り項目に限らず、売掛金の実証手続、棚卸資産の実証手続、取締役会等の議事録の閲覧まで入っていますので、「検証した個別監査業務において、重要な不備を含めて広範かつ多数の不備」といわれるのも最もな内容となっています。