女性活躍推進法に基づく男女別賃金格差開示が2022年7月以後終了事業年度から開始
女性活躍推進法の制度改正に係る厚生労働省令が改正され2022年7月8日に施行されました。
「男女賃金の差異」の情報公表が義務付けられるのは、常時雇用する労働者が301人以上の事業主とされています。
今回新たに追加されたのは「男女の賃金の差異」に関する情報公表ですが、改めて全体像を確認しておくと情報公表が求められている項目は以下のようになっています。
以下のAおよびBが「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する情報公表、Cが「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」に関する情報公表となっています。
A:以下の8項目から1項目を選択
①採用した労働者に占める女性労働者の割合
②男女別の採用における競争倍率
③労働者に占める女性労働者の割合
④係長級にある者に占める女性労働者の割合
⑤管理職に占める女性労働者の割合
⑥役員に占める女性の割合
⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績
⑧男女別の再雇用または中途採用の実績
B:男女の賃金の差異(必須)…今回新設
C:以下の7項目から1項目選択
①男女の平均継続勤務年数の差異
②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
③男女別の育児休業取得率
④労働者の一月当たりの平均残業時間
⑤雇用管理区分ごとの労働者の一月当たり平均残業時間
⑥有給休暇取得率
⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
では、今回新設された男女の賃金差異をどのように計算するのかについて、「男女の賃金の差異の算出方法等について」(厚生労働省)に基づいて、ポイントを確認しておきます。
①2022年7月8日以後最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表する必要があるとされています。
②正規労働者・非正規労働者 × 女性・男性の組合せで4つに区分、および全労働者の男女別に区分してして算出する。なお、さらに詳細な区分により、男女の賃金の差異の公表を任意で行うことは何ら差し支えないとされています。職種等の区分を任意に設けて開示するというようようなことが考えられます。
「正規雇用労働者」…期間の定めなくフルタイム勤務する労働者及び短時間正社員
育児短時間勤務者について、時間に応じて給料が減額されている場合、育児等が女性に偏っている現状があれば、男女の賃金差異は大きくなる可能性があるが、両性の働き方・休み方の違いが縮小すれば、男女の賃金差異の縮小として反映されるため、人員数等から除外はしない。
「非正規雇用労働者」…パートタイム労働者(1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(正規雇用労働者)に比べて短い労働者)及び有期雇用労働者(事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者)
なお、派遣社員については、派遣元事業主において算出対象とするため、派遣先の「非正規雇用労働者」にはふくめない。
③各区分の平均年間賃金を算出し、正規・非正規・全体の3区分について、それぞれ 女性平均/男性平均のパーセンテージを公表する(小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示)
(「男女の賃金の差異の算出方法等について」(厚生労働省)P10)
④総賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうとされています。通勤手当、退職手当(退職金)については、個々の事業主の判断により、「賃金」から除外する取扱いとして差し支えないとされています。
⑤有価証券報告書作成会社は、平均年間給与の算出方法が、女性活躍推進法における正規雇用者の定義や賃金の定義に適合している場合には、平均年間給与の算出方法を踏まえて、男女別の平均年間賃金を算出して差し支えない。
⑥人員数のカウントは一貫した方法で行うこと。例としては、事業年度の各月の特定日(給料支給日、月末)の労働者の平均を使用することが考えられるとされています。所定労働時間(日数)が短いパートタイマー等について、所定労働時間等を勘案して人員数換算するのは必須ではないが、各事業主の実情に応じて取り入れるのかを判断してよいとされています。
パートタイマーが多い会社では、調整を入れないと実態とはかなり異なった数値となることが予想されますので、1日8時間換算等で人員数を換算して計算することが多くなるものと考えられます。
⑦出向者については、実情応じて適切な方法を採用することで差し支えない。ただし、男女、正規・非正規で扱いは統一しなければならない。
⑧法人単位の開示が求められている(ホールディングであっても)
⑨男女の賃金の差異の公表例としては以下が示されています。
(「男女の賃金の差異の算出方法等について」(厚生労働省)P25)
⑩自社の実情を正しく理解してもらうため「説明欄」を有効活用することが望ましいとされており活用例として以下のような例が挙げられています。
・自社における男女間賃金格差の背景事情がある場合
・勤続年数や役職などを揃えて公表する
・より詳細な雇用管理区分での差異や、属性が同じ男女労働者間での賃金さいを追加情報として公表する
・時系列での情報公表