金銭信託の会計処理
今回は金銭信託の会計処理についてです。あまり出くわすことはないので、たまに会計処理の質問を受けると「有価証券として会計処理するはずです・・・」と口ごもってしまいます。
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)に書いてあったはずだと確認したところ第97項で以下のように定められていました。
金銭の信託は金銭を財産として委託する信託であり、運用を目的とする金銭の信託は信託財産の短期的な売買等で信託財産の価値を上昇させ、受益者に帰属させるものである。金銭の信託(合同運用を除く。以下同じ。)は、以下のように保有目的により運用目的、満期保有目的、その他に区分することができるが、これらの判定と会計処理は信託契約の単位ごとに行うものとする。
金銭の信託は一般に運用を目的とするものと考えられ、運用目的以外の目的とするためには、それが客観的に判断できることが必要である。したがって、金銭の信託を満期保有目的に区分し、信託財産構成物である債券を満期保有目的の債券として会計処理するためには、信託契約において、原則として受託者に財産の売却を禁止しており、かつ、信託期日と債券の償還期限とが一致していることなどが明確である必要がある。
また、信託財産構成物である有価証券をその他有価証券として区分するためには、信託契約時において、企業が当該信託を通じて有価証券等を保有する目的が、運用目的又は満期保有目的のいずれにも該当しないという積極的な証拠によって裏付けられ、かつ、信託財産構成物である有価証券の売買を頻繁に繰り返していないという事実に基づかなければならない。
実務指針にも述べられているように、「金銭の信託は金銭を財産として委託する信託であり、運用を目的とする金銭の信託は信託財産の短期的な売買等で信託財産の価値を上昇させ、受益者に帰属させるもの」です。
金銭信託にもいろいろ種類があって、以下のように分類されますが、比較的目にする機会が多い金銭信託は「合同運用指定金銭信託」だと思います。
上記で長々と実務指針第97項を引用しましたが、合同運用指定金銭信託については「金銭の信託(合同運用を除く。以下同じ。)」とされており、第64項で「投資信託及び合同運用の金銭の信託のうち預金と同様の性格を有するものは、取得原価をもって貸借対照表価額とする」とされています。
では、「預金と同様の性格を有するもの」とは何かが問題となりますが、この点については、金融商品会計に関するQ&AのQ19で「例えば、次のものが該当すると考えられます」として以下のようなものが掲げられています。
・信託銀行が一般顧客に一律の条件で発行する貸付信託の受益証券
・実質的に元本の毀損のおそれがほとんどないものであること(元本割れが生じないことが保証されているか、又は事実上そのような運用が行われていること)
・短期間(おおむね3か月以内)に運用成果が分配等されること
・過去の運用実績(元本に対する利回り)が預金の利率に比べて著しく高くないこと
結局のところ、金銭信託については以下のような処理になるといえます。
①合同運用の金銭信託
基本的に取得原価で計上
②合同運用の金銭信託以外
基本的に売買目的有価証券として時価評価し、評価差額をPL計上
ただし、以下の場合は満期保有目的の債券あるいはその他有価証券として取り扱うことができる。
(1)満期保有目的の債券として取り扱うことができる要件
原則として受託者に財産の売却を禁止しており、かつ、信託期日と債券の償還期限とが一致していることなどが明確であること
(2)その他有価証券として取り扱うことができる要件
信託契約時において、企業が当該信託を通じて有価証券等を保有する目的が、運用目的又は満期保有目的のいずれにも該当しないという積極的な証拠によって裏付けられ、かつ、信託財産構成物である有価証券の売買を頻繁に繰り返していないという事実に基づくこと
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