繰延税金のスケジューリングと適用実効税率はどうなる?
12月2日に法人税法の改正が公布されたことにより、税効果の計算に用いる実効税率に影響が生じることは“復興財源確保法と平成23年税制改正を修正した法人税法が公布されました”というエントリで記載しました。
今回の法人税法の改正内容を確認しておくと以下のようになっています。
①平成24年4月1日以後開始する事業年度の法人税率を、従来の30%から25.5%へと引き下げる(改正法人税法66条、平成23年法律第114号附則1条3号イ)
②平成24年4月1日以後開始する事業年度から3年間の時限措置として、各事業年度の基準法人税額(法人税の額から、所得税額控除、外国税額控除などに関する規定を適用しないで計算した法人税の額とし、附帯税の額を除く。)を課税標準とし、当該課税標準法人税額に10%の税率を乗じて計算した額を復興特別法人税として課税する(「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(以下「財源確保法」とする)48条、47条、44条、45)
税率の改正の場合、翌期から税率が改正されるのみであるのが一般的ですが、今回の場合は時限措置として3年経過後は再び税率が変更されることが明らかになっています。
つまり、3月決算の会社を前提とすると、平成24年3月期は現行の税率、平成25年3月期~平成27年3月期は上記②の税率、そして平成28年3月期からは①の税率が適用されることになります。
現行の実効税率、上記①および②の実効税率は以下のように計算されます(東京都 資本金1億円超の場合)
(1)現行の実効税率
(2)復興特別法人税あり(上記②)
(3)復興特別法人税なし(上記①)
税効果会計に係る会計基準第二 二2では「繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする」とされていることから、理論的には繰延税金の解消が見込まれる年度に適用される実効税率を用いて繰延税金の金額を計算すべきと考えられます。
つまり、繰延税金の解消年度のスケジューリングに応じて、解消年度に適用される実効税率を用いて繰延税金を計算するという処理が必要になると考えられます。
なお、不幸にも12月中に改正法が公布されてしまっていますので、3月決算の会社はこの12月期において、今期(平成24年3月期)に解消が見込まれる分は現行の税率、平成25年3月期~平成27年3月期に解消が見込まれる場合は上記②に対応する実効税率(38.01%)、平成28年3月期以降に解消が見込まれる場合は上記①に対応する実効税率(35.64%)で繰延税金の金額を計算する必要が生じます。
監査委員会報告第66号5.(2)“将来解消年度が長期にわたる将来減算一時差異の取扱い”において「退職給与引当金(退職給付引当金)や建物の減価償却超過額に係る将来減算一時差異のように、スケジューリングの結果、その将来解消年度が長期となる将来減算一時差異については、企業が継続する限り、長期にわたるが将来解消され、将来の税金負担額を軽減する効果を有する」とし、会社の区分によって“おおむね5年”を超えて解消が見込まれる上記のような一時差異に対して繰延税金資産の計上が認められることとされています。
このような一時差異に対して適用する実効税率ですが、おおむね5年内に解消すると明確に言えない部分は復興特別法人税を加味しない実効税率(35.64%)で繰延税金を計算することになると考えられます。
いずれにしても実務上は面倒ですね・・・
日々成長