スケジューリングの可否と繰延税金負債の関係
スケジューリング不能な将来減算一時差異に対しては原則として繰延税金資産を計上することができません(「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号))。
これは、スケジューリング不能であると繰延税金資産の回収可能性を判定することができないためです。
ただし、期末において損金算入時期が明確でない将来減算一時差異についても、貸倒引当金等のようにその計上に合理性があるが個別案件ごとに損金算入時期を特定することが困難な場合は、過去の損金算入実績に将来の合理的な予測を加味した方法等により、合理的なスケジューリングが行われている限り「スケジューリング不能な一時差異」とは扱わないこととされています。
スケジューリング不能な一時差異として繰延税金資産の計上ができないものの典型例としては使用している土地の減損損失や有価証券の減損損失などが挙げられます。
なお、原則として 繰延税金資産を計上できないとしたのは、いわゆる会社区分1の会社については「スケジューリングが不能な将来減算一時差異についても、将来スケジューリングが可能となった時点で課税所得が発生する蓋然性が高いため、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産については回収可能性があると判断できるものとする」とされているためです。
繰延税金資産の計上におけるスケジューリング不能な一時差異の取扱いのイメージが強いため、スケジューリング不能な繰延税金負債が生じるとスケジューリング不能なので繰延税金負債の計上は不要と勘違いしてしまうことがあるようです。
この点、税効果の実務指針(個別)の第16項では、「一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を控除し、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければならない」とされているので、繰延税金負債についても支払が見込まれない場合以外は計上が必要となります。
したがって、スケジューリング不能=支払いが見込まれない、と考えれば計上が不要(できない)といえそうですが、第24項で「第16項の支払が見込まれない場合とは、事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合に限られる。」とされていますので、スケジューリング不能であることをもって繰延税金負債を計上しなくてよいということにはなりません。
スケジューリング不能な将来加算一時差異について繰延税金負債を計上しなくてもよい状況は、上記のようにかなり限定的ですので、繰延税金負債は計上が原則となります。
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