顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」-フレッド・ライクヘルド
少し前に興味があって購入した『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』を読みました。私が購入した時点では中古しかなかったのですが、今は新品も出品されています。
この本に興味をもったのは、べイン・アンド・カンパニーの日本法人のパートナーの方が解説しているある番組で、顧客満足度と成長性に有効な相関関係がみられないと解説しているのを聞いたことによります。
確かに、様々な顧客満足度調査が公表されていますが、前年の順位との比較がなされているだけで成長性や収益性との関係についてはほとんど述べられていないように思います。
気になる顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」は、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか」というものです。
この質問に対して10点満点で回答してもらい、9点および10点を推奨者、7点及び8点を中立者、6点以下を批判者として、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたものをNPS(推奨者の正味比率(ネット・プロモーター・スコア))と いう指標として用いるというものです。
そして、ライクヘルド氏の研究によると、このNPSという指標が企業の成長性と高い相関を有しているということです。
非常にシンプルな指標で、理解しやすいですが、だからといって測定方法が簡単というわけではなく、顧客からのフィードバックを測定し管理するのは利益を測定し管理するのと同じくらいの厳密さが求められると解説されています。
測定の際の注意点については、測定の7原則として同書で触れられています。ここでは、そのうち「原則2 有効な評価尺度を選び、それを使い続ける」について紹介します。
原則2については、NPSを10点法で採用する理由が述べられていますが、その一つが学校での成績評価から直感的に意味を理解できると述べられています。すなわち、10点はA、9点はAマイナス、8点・7点はBとC、6点以下は落第点というようにすぐに理解できるというものです。
この点について、日本では5段階評価も一般的なので、日本で採用しようとするときは工夫が必要だと考えられます。同書でも
「評価尺度に関する最も重要な注意事項は、自社に最適なものを選ぶことである。自社の評価尺度の有効性を見極める最善の方法は、その尺度を使って、顧客をその行動と矛盾なく正確に、推奨者、中立者、批判者に分類できるかどうかを試してみることである。」
とされています。
したがって、5点法でも構わないと考えられますし、現に同書で成功事例として書かれているエンタープライズ社では5点法が採用されているそうです。さらに言えば10点満点であっても、日本では6点以下が批判者ではなく4点以下が実態にあっているというような可能性もあります。
要は、NPSという指標が成長性にリンクするような運用の方法を探していくという作業が必要になるものと考えられます。
また、従来の顧客満足度調査が役に立たない理由が第1位から第10位で10個述べられていますので表題のみ列挙します(実際は第10位から書かれています)。
第1位 調査の信頼性を地に落とすごまかしと操作
第2位 顧客の不満の種となる顧客満足度調査
第3位 取引とリレーションシップを混同した調査
第4位 顧客満足度調査における標準的体系の欠如
第5位 ありきたりの調査手法では満たせない企業固有のニーズ
第6位 調査結果と経済性との相関の欠如
第7位 調査をかたるマーケテイング・キャンペーンの横行
第8位 過ちを改めるすべがない社員
第9位 誤った回答者選び
第10位 頻繁すぎる調査と多すぎる質問
第1位の調査の信頼性を地に落とすごまかしと操作についてのみコメントしておくと、これは必ずしも従来の顧客満足度調査に限定されるものではなくNPSでも正しく運用されない可能性があるという点についてはライクヘルド氏も同書で述べています。
上記のNPSですが、従業員満足の測定にも使用することができるのではと考えていましたが、ライクヘルド氏も「訴求価値を効果的に「提供」する企業能力が重要な意味を持つ」として、提供者たる従業員の会社に対するロイヤルティを図るためにNPSを使用しているようです。
従業員の会社に対するロイヤルティの調査は、面白いのではないかと思います。
2011年9月にThe Ultimate Question 2.0という新作が出版されており、まだ日本語版はないようですが、前回出版から5年程度経過しているので、さらに直近の研究成果が述べられているのではないかと期待しています。
最大の問題は、英語を読むのは時間がかかるので、翻訳されるのを待つかどうかを思案中です。
日々成長。