固定資産の減損損失は税務上加算必要 or 不要?
金融庁から公表された有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項(平成25年3月期版)でも固定資産の減損が取り上げられていましたが、固定資産の評価損の法人税法上の取扱いについて確認します。
会計上の減損損失を即税務上加算と考えてしまいそうですが、そのように考えていると大きく間違える可能性があるので注意が必要です。
1.固定資産の評価損の損金算入が認められるケース
連結納税の開始・加入など特殊なケースを除くと、法人税法においては以下の場合に固定資産の評価損が損金算入が認められます(法人税法33条2項、法人税法施行令68条1項3号)。
(法人税法施行令68条1項3号)
イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
ロ 当該資産が一年以上にわたり遊休状態にあること。
ハ 当該資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと。
ニ 当該資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと。
ホ イからニまでに準ずる特別の事実
2.固定資産の評価損の計上の基礎となる時価
固定資産の評価損を計上する場合における法人税法上の時価については、法人税法基本通達9-1-3で以下のように述べられています。
(時価)
9-1-3 法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定を適用する場合における「評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額」は、当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額による。
(以下省略)
つまり、独立した第三者との取引において付される価格ということになります。会計上の減損損失は売却可能価額ではなく使用価値を用いて算出されることが多く、一般的に使用価値を使用した場合の方が減損損失が小さいことからすれば、上記の要件を満たす場合、会計上計上された減損損失の損金算入が認められる可能性があるということになります。
なお、償却資産については、その資産の再取得価額を基礎としてその取得の時から事業年度末日まで旧定率法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額を評価額とすることが認められています(法人税法基本通達9-1-19)
3.固定資産の評価損が認められないケース
固定資産の時価が下落し、法人税法施行令68条1項3号に掲げる事由が存在すれば評価損の損金算入が認められるわけですが、法人税法基本通達9-1-17では、「固定資産について評価損の計上ができない場合の例示」として以下が示されていますので、これらの事由については注意が必要です。
(固定資産について評価損の計上ができない場合の例示)
9-1-17 法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定により固定資産の評価損が損金の額に算入されるのは、当該固定資産について令第68条第1項《資産の評価損の計上ができる事実》に規定する事実がある場合に限られるのであるから、当該固定資産の価額の低下が次のような事実に基づく場合には、法第33条第2項の規定の適用がないことに留意する。(昭55年直法2-8「三十一」、平12年課法2-7「十六」、平17年課法2-14「九」、平21年課法2-5「七」により改正)(1) 過度の使用又は修理の不十分等により当該固定資産が著しく損耗していること。
(2) 当該固定資産について償却を行わなかったため償却不足額が生じていること。
(3) 当該固定資産の取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと。
(4) 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること。
個人的に(4)は若干厳しい気がしますが、製造装置で旧式化して使用に耐えないのであれば除却して損金算入しなさいということだと考えられます。
4.遊休資産の評価損の注意点
法人税法施行令68条1項3号で掲げられている事由のうち「一年以上にわたり遊休状態にあること」という要件は比較的使い勝手がよさそうですが、非償却性資産の場合には、単に1年以上遊休状態にあり時価が下落しても評価損の損金算入が認められない可能性が高いので注意が必要です。
この点については、国税不服審判所のHPに掲載されている裁決事例(平15.1.28裁決、裁決事例集No.65 401頁)が参考になります。
この裁決事例では、周辺土地の取引時価を参考にして算出した価額が下落していたものの、「資産の評価損の額を損金の額に算入するためには、政令で定める事実が生じたことのみでは足りず、当該事実が生じたことにより当該資産の価額が帳簿価額を下ることとなったことが必要であると解される」とし、「本件土地は1年以上にわたり遊休状態にあるが、遊休状態にあることにより本件土地の価額が帳簿価額を下ることとなったとは認められないので、本件評価損については、法人税法第33条第2項の規定を適用することはできない。」として評価損の損金算入は認められませんでした。
つまり、遊休状態にあったことを原因として時価が下落したのでなければ法人税法上、非償却性資産の評価損の損金算入は否認される可能性が高いということです。そう考えると、この要件で土地の評価損を損金算入しようとするのは難しそうです。
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