建設仮勘定と仕入税額控除の時期(消費税)
今回は建設仮勘定と消費税の仕入税額控除の時期についてです。
消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行うことになっているので、当該設計料に係る役務の提供や資材の購入等の課税仕入れについては、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります(タックスアンサー No.6483 建設仮勘定の仕入税額控除の時期)。
しかし、一方で「建設仮勘定として経理した課税仕入れについて、物の引渡しや役務の提供又は一部が完成したことにより引渡しを受けた部分をその都度課税仕入れとしないで、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の課税期間における課税仕入れとして処理する方法も認められます。」(同上)とされています。
このような取扱いが認められるのは、建設仮勘定に含まれる金額には前渡金(中間金)なども含まれるため、課税仕入となる項目とそうでない項目を区分して処理するのが煩雑であることへの配慮のようです。
そうはいいつつも、一般的には、先に仕入税額控除を取りたいという思惑が働くため、例えば、建築中の建物のうち役務の提供が完了した設計料が含まれているのであれば、役務の提供が完了した時点で仮払消費税を計上していることが多いのではないかと思います。
ここで気になるのは、来年4月1日以降消費税が8%になった際に、経過措置の適用がない取引に関連する建設仮勘定に対する消費税の取扱いがどうなるのかです。
現時点において、工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の課税期間における課税仕入れとして処理する方法も認められるという処理については特に変更はないようですので、そうだとすると3月末までに計上されていた建設仮勘定が4月1日以降に本勘定に振り替わった場合、その時の消費税率、すなわち8%で仕入税額控除を計算できるのではないかと考えられます。
建設仮勘定を構成するものの中には、個々の外注取引としては取引が完了しているものも含まれると考えられ、その場合、これらの取引は消費税は5%で請求されてきていることになります。ところが、建設仮勘定を消費税込で計上し工事の目的物のすべての引渡しを受けた日の課税期間に処理する方法を採用し、それが4月1日以降となることで8%で仕入税額控除を計算できるとすれば、従来とは全く別のロジックとなり、その都度仕入税額控除をとるのは不利という事になります。
もっとも、本来消費税は受領した消費税を納めるというのが基本的な考え方なので、本当に上記の処理が認められると違和感が残りますが、5%で保守の前受をしていても役務の提供が4月1日以降であれば8%で仮受消費税を計算しなければならないということと表裏一体の関係にあることから、建設仮勘定の取扱いが変わるのであれば5%で受領した前受金の取り扱いも変更になるはずです。
経過措置の対象にならない建設仮勘定なので、金額的にはそれほど大きなものにはならないかもしれませんが、仮に1億円規模であれば300万円程度の影響があるので、処理方法を検討する価値はあるのではないかと思います。
日々成長