改正会社法(その4)-監査等委員会設置会社詳細(その3)
”改正会社法(その3)-監査等委員会設置会社詳細(その2)”の続きです。改正会社法で導入された監査等委員会設置会社について確認します。
6.監査等委員会の権限と義務
(1)監査等委員会の職務(改正会社法399条の2第3項)
監査等委員会の職務として以下の三つが定められています。
- 取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務執行の監査及び監査報告の作成
- 株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任ならびに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定
- 監査等委員である取締役以外の取締役の選任・解任・辞任・報酬等に関する株主総会における監査等委員会の意見の決定
上記1.と2.は指名委員会等設置会社における監査委員会の権限と同様ですが、監査等委員会には上記3.が認められるという点に特徴があります。
(2)費用の前払請求権(改正会社法399条の2第4項)
改正会社法399条の第4項では以下のように定められています。
監査等委員がその職務の執行(監査等委員会の職務の執行に関するものに限る。以下この項において同じ。)について監査等委員会設置会社に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査等委員会設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査等委員の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。
これは、現行の委員会設置会社における委員会の権限(会社法404条4項)で定めれられている事項と同様の規定となっています。
(3)業務財産調査権(改正会社法399条の3)
これも指名委員会等設置会社における現行の規定を踏襲したものとなっています。
(監査等委員会による調査)
第三百九十九条の三
監査等委員会が選定する監査等委員は、いつでも、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)及び支配人その他の使用人に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は監査等委員会設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
2 監査等委員会が選定する監査等委員は、監査等委員会の職務を執行するため必要があるときは、監査等委員会設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 前項の子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。
4 第一項及び第二項の監査等委員は、当該各項の報告の徴収又は調査に関する事項についての監査等委員会の決議があるときは、これに従わなければならない。
監査役との比較でいえば、各監査役に業務財産調査権が認められているのに対して、監査委員等設置会社の監査委員の場合には、監査等委員会が選定する監査等委員にこの権限が認められるという点に違いがあります。
(4)取締役会への報告義務(改正会社法399条の4)
(取締役会への報告義務)
第三百九十九条の四監査等委員は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければならない。
この義務は各監査等委員が負うこととされています。
(5)株主総会への報告義務(改正会社法399条の5)
(株主総会に対する報告義務)
第三百九十九条の五監査等委員は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものについて法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その旨を株主総会に報告しなければならない。
監査役設置会社の場合、現行会社法384によって同様の義務が課せられていますが、指名委員会等設置会社の場合にはこのような義務は課せられていません。これは、「指名委員会等設置会社の監査委員は取締役であるため、法令等の違反等があれば総会提出議案を審議する鳥島射役会で確認するであろう」(「ここが変わった! 改正会社法の要点がわかる本」三原秀哲著)と考えられているためです。
監査等委員設置会社の監査等委員も取締役であるのは同様ですが、監査役の権限にならって同様の規定が置かれたとのことです。
(6)取締役および会計参与に対する説明義務(改正会社法399条の9第3項)
取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)は、監査等委員会の要求があったときは、監査等委員会に出席し、監査等委員会が求めた事項について説明をしなければならないとされています。
(7)差止請求権(改正会社法399条の6)
「取締役が監査等委員会設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査等委員会設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」とされています。
現行法における監査役(385条1項)、指名委員会等設置会社(407条1項)と同様の規定となっています。これも各監査等委員が単独で実施できるものとされています。
(8)会社と取締役との間の訴えの代表権
会社と取締役との間の訴えについては、監査等委員が訴訟の当事者である場合を除き監査等員会選定する監査等委員が会社を代表するとされています(改正会社法399条の7第1項2号)。
なお、監査等委員が訴訟の当事者である場合は、取締役会が定める者、あるいは株主総会においてその訴訟での会社の代表者を定めた場合はその者が会社の代表権を持つとされています(改正会社法399条の7第1項1号)。
7.監査等委員会の運営
(1)招集等
監査等委員会は、各監査等委員が招集権を持つとされています(改正会社法399条の8)。また、監査等委員会を招集するためには、会日の1週間前(定款でこれを下回る期間を定めた場合にはその期間前)までに、各監査等委員会に通知する必要があります(改正会社法399条の8)。
さらに、監査等委員全員の同意があれば招集手続を省略することができるとされています(改正会社法399条の9第2項)。
(2)決議方法
監査等委員会の決議は、議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その過半数をもって行われます(改正会社法399条の10第3項・4項)。ある意味当然ですが、その決議について特別の利害関係を有する監査委員は議決に加わることはできません(同条第2項)。
(3)議事録
監査等委員会設置会社は、監査等委員会の日から10年間、監査等委員会の議事録をその本店に備え置く必要があります(改正会社法399条の11第1項)。
なお、監査等委員会で行われた決議について、その決議に参加した監査等委員で議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成した者を推定されるとされています(改正会社法399条の10第5項)。
監査等委員会設置会社における取締役会の権限が残っていますが、これは次回以降とします。
日々成長。